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コウテカの庭  作者: 島 アヤメ
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渾身の一撃

白狐は目を白黒させて悲鳴を上げた。息吹は噛み付いたまま一向に離れようとしない。


"このカスがっっ!離れろっっ"


白狐は悪態をついて息吹を剥がし、砂浜に放り投げた。息吹の体は吹っ飛びドサっと落ちたが、白狐からさほど離れていなかったのを好機として、白狐の両目に向かって砂を投げかけた。


"きったねえぞ!!このクソ餓鬼、殺してやる!!"


白狐は両目をやられ、烈火のごとく怒った。先ほどまではしゃいでいた空気は今は微塵もない。息吹はそれでも躊躇せず、白狐の懐に潜り込んだかと思うと、小さな体は白狐の胸倉を掴んで背負い投げ砂浜に叩きつけた。


"グハアっ"


流石の白狐も背中を地面に叩きつけられ、痛みのあまり白目を剥いた。息吹はヨロヨロと白狐の頭上に近づいた。


「………はあはあ。っぐ」


息吹は額に油汗が流れるのを感じながら、腹わたの痛みに必死に耐えた。


「これが……ぐっ……七之助さんの……うぐっ……お父さんとお母さんのぶん」


息吹は、仰向けになってクラクラしている白狐はの上にまたがると、胸倉を掴んで顔を近づけた。白狐が何か言い返そうとした時だった。





息吹の小さな額は、ものすごい速さで白狐の頭に向かって叩きつけられた。


渾身の頭突きであった。






息吹は視界がチカチカしたかと思うと、あっと言う間に真っ白になりそのまま気絶した。白狐の方も白目を剥いて意識が無いようだった。





暫く静寂が訪れた。

遠くで波の音が聞こえる。死海が近くにあるのだろうか。




側で見物していた3人は、予想しなかった展開に沈黙していたが、赤兜は呆れたように口を開いた。


"……こんな無様な戦い見た事がないな"


青鷺はフツフツと怒りが込み上げてきたのか、眉をひそめて吐き捨てるように応えた。


"砂を目にかけるなど何と卑怯な……。下賤な者のする事だ!!"


黄盾は暫く黙っていたが、唯一二人とは違う見解を唱えた。


"でもまあ……このチビが、あの白狐に一泡吹かせたのは確かだよ。下賎な者も油断できねーな"


青鷺は、こんな戦い方俺は認めん!と憤慨したが、赤兜の方はちょっと違う考えを示した。


"白狐のスピードは我らの中でも一二を争う。お互い力がないもの同士今回の戦いは、この子供がどういう奴か一瞬垣間見れたかもしれん……"


"兄者!!こいつを生かして置く気か?!"


青鷺は激昂したが、赤兜の考えは変わらなかった。


"俺達は確かに巨大な力を持っているが、発揮させるには強固な器が必要だ。……こいつはまだ幼く調教しようがある"


黄盾は賛成のようで、何も言わなかった。青鷺の方は納得いかないようで、赤兜に意見しようとした時であった。


"このカスがあ!!ゲホっ"


早々に意識を取り戻した白狐は、気絶している息吹に向かって、呪うかのようにブツブツ呟きながら近づいてきた。


"……殺してやる殺してやる殺してやる"


殺気だった白狐が息吹に近づき、長剣を喉元に振りかざそうとした。





"やめとけよ"


殺気漲る黄盾が、いつの間にやら白狐の側に立ち呟いた。それは兄弟ではなく、力があるものが一喝するような空気であった。


白狐は一瞬怯み、黙って剣を下ろした。







"仕切り直しだ"



赤兜は声を張り上げたか否や背を向けその場を立ち去った。


残された3人は願いは同じであれど、各々この小さな子供に複雑な感情を抱いたまま、長兄に従うしかないのであった。



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