対自
闇の中で息吹の体は金色に輝きだした。照らし出された闇の中で、傷だらけ人々が息吹の眼下で手を伸ばしている。
(きっと助け出してみせる)
闇の中は真っ暗な海のようで、息吹は呼吸ができることを不思議に思いながら、頭上に向かって泳ぎだした。亡者達は声が出ないようで、遠ざかる息吹に向かって手を伸ばし続けている。息吹は、胸が苦しくなるのを感じながらそのまま泳ぎ続けた。
(七之助さん、お父さんお母さんはここにいるよ……)
息吹は泳ぎ続け、遂に水面から顔を出した。
「プハッ」
頭上には、あの四人が驚きの表情でこちらを眺めている。
"まさか死海から出てくるとは"
"死海鼠の体が消えたから、一緒に消えたかと思ったけど……なかなかしぶといね♫"
赤兜の呟きに覆い被さるように白狐は上機嫌ではしゃいだ。
"やはりこいつ、何らかの力があるのは間違いない"
"俺らが直々に手を下すしかないよー"
青鷺は眉間にシワを寄せながら嫌悪感たっぷりで言い放った。黄盾はニヤニヤしながら、ぼきぼき指を鳴らしている。
息吹は最初彼らにあった時の恐怖を思い出した。彼らの殺気は、息吹がこれまで感じた事のない程恐ろしいものだが、今は対自する力が体にみなぎるのを確かに感じる。
"……こいつ俺らとやる気だぞ"
黄盾は今までののんびりした空気を消し去り、息吹を睨みつけた。息吹の瞳の奥で青い炎が燃え盛り、体を纏う金色の光は輝きを増した。いつの間にか、死海は消え、真っ白な砂浜の上で四人と向き合っている。殺気を放つ手練れの四人は、息吹を値踏みしている。
(コウテカ様、今だけでいい、力を貸して下さい)
ーー息吹は覚悟を決めた。
"俺で十分だよ♫……兄者達が出る幕じゃないよっっ"
白狐は一瞬屈んだか否や、息吹のは眼下に移動し腹わたを思いっきり殴った。鈍い音が鳴って息吹はあっという間に、真っ白な岸の上に吹っ飛んだ。
「っぐ」
息吹は立ち上がろうとしたがあまりの痛さに吐いてしまい、手足が痺れるのを感じた。腹わたの痛みは消えはしなかったが、闘志が消える事はなかった。
"意外と頑丈だね♫……手加減不要と承知したっっ"
暫く息吹は殴られては、吹き飛ばされた。他3人はニヤニヤしながらカス相手に白狐も大人気ないと笑い合っている。
"もうちょっと抵抗してくれないとつまんないよっっ"
腹わたの痛みで息吹は何度も吐いたが、息吹は諦めた訳ではなかった。
風のような早さでまた白狐が次の一撃を狙ってくる。だが、息吹は避けず白狐の体にしがみついたかと思うと、思いっきり噛み付いた。白狐はこの事態を想定していなかったのか、情けなく大声をあげた。
"痛ええーーーー"




