まけない
(寒い……)
息吹は自分が闇の中で宙に浮いている事に気付いた。体は鉛のように重く、息がしづらくて苦しかった。
(死んじゃったのかな)
ぼんやり考えたが、なんだかうまく頭が働かない。
(あんなに死ぬのが怖かったのに、思いもしない所で死んじゃうんだな)
息吹は今、自分が冷静であることが不思議に思えた。
(私の気持ち怪物さんに伝わったかな……)
息吹はどうしても七之助が今生きていることを伝えたかった。考えて行動したんではなく本能のままに動いた結果であった。
闇の中は肌寒く、なんの気配もしなかった。
ここは怪物の体の中なのか、それとも黄泉の世界であるのかもう息吹にはどうでもいいことに思えた。
(ちょっと休憩……)
目を瞑ると輝く髪のよく知った少女が腰に手を当てて眉間にシワを寄せている。
"こんな所で諦めるの?!"
息吹は懐かしい姿に驚いた。
"あの決意は一体何だったのよ!"
叱り飛ばしたエマの姿が消えたかと思うとコウテカとトカゲ男がからかうように息吹に声かけてきた。
"船の上でのお前さんはあ、もうちょっと根性があったぜえ"
"お前はそれでいいのか"
息吹はいい訳したかったが声を出すことができない。そう思った瞬間最も会いたかった懐かしい笑顔の先生と、最も長く一緒にいた阿修羅の姿が息吹の前に現れた。
"お前を信じてるぞ息吹。……お前は俺の自慢の弟子だ"
ーーーーキュルルル
息吹はぐッと息を止めたかと思うと吐き出すのと同時に目を覚ました。
(ここで終われない)
鉛のように重かった体は輝き始め、息吹は自分な中から抑えのようのない力がみなぎるの感じた。
(私は絶対にまけない!!)
胸に拳を当てて、息吹はありったけの思いを込めて、願いを心の中で唱えた。
(コウテカさま!!哀れな魂にどうか安らぎを!!)




