対立
"ギルマ?"
白狐はしばしの沈黙の後、自分が気になった言葉だけを口にした。
"なにそれ。倭国の他に国はあるのは知ってたけど、発音しにくいなあー。どんな国?"
全く違う話題になりそうな事を見かねて黄盾は、白狐を諌めた。
"お前ちょっと黙っとけ。おい子供 、お前が倭国の為に力を得たいのはなんとなく伝わったが、俺たちもそう簡単にはい、そうですかとはいかないんだ。倭国は一見平和に見えるが、今も父上に取って代わろうとしてる奴は山程いる。俺たちは数珠と命を共にしてきた時から叶えたい望みは1つなんだ"
「お父さんを悲しませたくないんでしょ?」
息吹は黄盾が言葉をつなげる前に、食い気味で喋った。
「私はハヤテ先生弟子で、神谷様が言うには魔法の才能もあるかもって」
"神谷だと……"
皆、一瞬冷たい空気になったが息吹は怯まず続けた。ここでやめたら負けだ。
「私、ギルマで命を狙われて、なんとか逃げて来たの。ここに来るまで、なんにも関係ない人達が助けてくれた。顔や形が動物の人もいたけど、とってもかっこよかったし、また会えるんだったら会いたい。」
四人の表情はますます冷たくなったが、そんな事今はどうだっていい。
「ギルマで暮らしてた時だって、すごく楽しかった。……私、先生が理由があって、私を育ててくれたんだとしても、大好きな事には変わらない。エマやゲリーさんが例え違う国の人でも、それはおんなじだよ」
聞いたことのな名前や、考え方が出て来て皆おし黙った。息吹の考え方や、物の見方は四人にとって簡単に理解できるものでは無かった。黙っていられず赤兜は、唸るように息吹を問い詰めた。
"……貴様、冗談を言うのも大概にしろよ。俺は、倭国以外の者を人間だとは思わん……この倭国の恥晒しが!"
最後は激昂に近かったが、息吹もここは折れることはできなかった。大切な人達が侮辱された事で息吹もカッカしてきた。
「私だってあなたみたい大人になんかなりたくない……。偉そうなだけで本当はなんにも知らない大バカものの分からずや!」
最初はお願い事をする立場で、下手に出ていた息吹だが、もうこうなったら暴走だ。赤兜も気が短く、息吹の無礼な物のいいように一気に怒りに点火された。
"……小童、命が惜しくないようだな。そこまで言うなら、ここで亡者どもと共に朽ち果てろ!"
あたりの霧はいっきに濃くなり、息吹の前のから四人が消えた。おどろおどろしい空気がなにやら立ち込め、生臭い匂いが息吹の嗅覚を刺激した。息吹の心臓は激しく波打ち 、額に脂汗が滲む。
(なに?……この匂い、動物が焼ける匂いに似てる)
息吹は拳を鼻にかざし、眉間にしわを寄せた。生き物じゃない気配が大きく蠢いてるのを感じる。だが、霧はどんどん深くなり、視界は真っ白だ。
ーードコオ、ドコニイルウ。ハヤクミセロオ。




