自覚
「私は…」
喉がつっかえて、声は掠れた。息吹は四人をよく観察した。只者でない事は確かだ。まだ若く見えたが、周りを包む気配はおぞましく、死の匂いがした。
「誰にも負けない強い力が欲しい」
やっと出て来た言葉は、息吹の心からの願いだった。もう弱い自分に泣く事はうんざりだったし、助けてくれた人達の期待を裏切るような事はしたくなかった。
"力か。我らもかつて追い求めた物であったが、手に入れた今は、唯だ虚しいばかりだ"
赤兜は太い眉にシワを寄せ苦渋の表情を見せた。
"力は殺戮と哀しみしか生まん。例え手に入れても 、幸せにはなれんぞ"
青鷺は冷ややかに息吹に忠告した。
"だな。俺たちは父上を喜ばせたくて、今はこんなこんな事になったけど、結局父上を苦しませているしな"
黄盾はハアとため息をついて、ピンピン逆立った髪をグシャっと搔きむしった。
"俺は別にそこまで考えてなかったけどねー。今の自分も結構気に入ってるよ♪可愛い俺にはぴったりじゃね?まさに神の御使 ♫"
白狐は戯けながら頬に両手を当てうっとりした。出たよといいながら他の3人はうんざりした表情だ。息吹は四人の会話をよく聴きながら必死で頭を働かせた。
「私は、倭国の事をよく知らない。ホントは……力なんて全然欲しくない」
息吹の先程とは真逆の意見に、四人は怪訝そうな顔をした。
"ならば何故我らを呼び出したのだ"
赤兜の鋭い眼光に息吹は挫けそうになったが、必死に素直な気持ちを述べた。
「戦を起こしたくない。誰かを殺したり、その家族を悲しませたくない。だから、この国を守る為に力が欲しい」
"倭国を知らないお前が何故そこまでする必要がある"
「そんな事関係ないよ!!」
今まで弱気だった息吹はいきなり大声をあげて反発した。四人とも目を丸くしている。
「大人は……私が倭国で育ってないからって色んな目で見てくるけど、私から見たらギルマも倭国も大人は皆んな一緒だよ!親切な人もいれば、私の事嫌いな人もいるし、色んな気持ちがあって……皆、家族や大切な人がいる。私には、倭国で育ってなくたって、大好きな人がいるってだけで、十分守りたい理由だよ!」
何故だか目頭涙滲ん泣き出したい気持ちだった。こんなに声を荒げて、自分の気持ちを必死に伝えようとしたのは初めてだ。尊治に反抗した時でさえ、こんなにもはっきり自分の考えを自覚してなかった。
「だからお願いします。私に力を貸して下さい。……私にしかできないことなら、もう逃げ出したくない」




