神谷の本音 2
「……そんな事考えた事も有りません」
高菜は顔を背け、目をつぶった。考える事も恐ろしかった。
「そうだよな。……でも俺はずっと考えてた。力ある者が国を治めるなんて、なんだか破滅的だなあって。まあ、父上が聞いたら、俺は即、殺されそうだが」
「おやめ下さい。そんな事、よりにもよって帝の御子息である神谷様が口にするなど、不謹慎です」
神谷は天井を見上げ、だよなあと呟いた。
「でもさ、たった1人力のある者が国の行く末を決めるよりさ、皆んなでより良い方法を考えた方が、いい様な気がするんだ」
見上げた高菜は、神谷より随分背が高く、細い首がより容姿をよく見せた。
「私はそうは思いません。そのような考えを民に与えれば、混乱と争いがまた起こるだけです。今平和であるのも、法力の絶対的な使い手がこの国を治めてるからです。皆、納得できる仕組みだと思いますが……」
「だよな。現にこの国は上手くいってる様に見える。尊治達の事を除けば」
高菜はこの言葉を聞いて何も返せなかった。だが、それは考えてはいけない事だった。
「今は、結果を急ぐべきではありません。先ほど、雪姫様に伺う事を御報告しました」
「そっか」
尊治は、自分の伯母にあたる存在を詳しく知らなかった。理由は、尊治の母親が彼女のことを大層嫌っていたからだ。だがそれは、息吹の母親だけではなかった。彼女は宮中の者達を全てを毛嫌いしていた。このため、尊治は最近まで親戚や兄弟と殆ど面識がなかった。通常ならそんな事は許され無いのだが、彼女の特別待遇は異例な事だらけであった。
「尊治は雪姫には会ったことがないんだ。あいつが幼い時に幽閉されたからな」
「今頃お会いになってどうするんです?彼女はもう……」
「まともじゃないって言いたいんだろ。しょうがないよ。愛する人を目の前で処刑されたんだ。そりゃ、おかしくもなるさ」
高菜は黙った。彼女に関してはおかしな噂ばかり耳にする。
「息吹は恐らく法力を封印されている。直接会って、封印を解く方法を教えてもらわなきゃいけないんだ」
「……やはりその道しかないのですね。お父上さまが不審に思われませんか?」
「思ったとしても、止めはしないよ。俺がどう動くかって方が気になるだろうからな」
高菜は神谷の小さな瞳をじっと見た後、分かりましたと言い、頭を下げた後、部屋から出て行った。
乾いた風が神谷のブツブツした頬をそっとなでた。
「新しい風の予感だな」




