恋バナ
息吹は、ここに来てから先生と一緒にいた頃のような安らぎを感じていた。日差しが強くなり暑い日も多くなった。高菜は、息吹を少しでも喜ばせようと、かき氷という物を息吹に食べさせてくれた。最初の氷は、みかんの汁が、雪のような氷の上にかかって 、見た目にも涼しく、息吹はたいそう喜んだ。
今の息吹の興味は、食事の後、どんなかき氷が食べれるかという事だった。
「さあ、お楽しみのかき氷ですよ」
高菜は、息吹の汗を拭ってやった後、今日は赤いかき氷を差し出した。
息吹はもう釘付けで、頂きますを言ったかどうかわからない感じで口に頬張った。高菜はそれをニコニコしながら、眺めている。
三分のニ位食べ終わった頃、息吹はようやく顔を上げ高菜の方を見た。
「すっごくおいしいー。なんかちょっと酸っぱいのもクセになる!」
高菜は、苦笑しながら今日はヤマモモですからねと言ってお茶を出した。息吹は、これも大好きとにっこり笑った。
「残念なお知らせですが、氷も今日で終わりです」
息吹は、不満そうな顔をしたが高菜は次はお団子かもしれませんよと慰めた。
「お姉さんはどうしてこんなに私に優しくしてくれるの」
息吹はなんとなく聞きそびれた事を口に出してみた。
「神谷様のご指示だからですよ」
「お兄さんはえらい人?」
「そうですねえ……偉い人ではあるんですが、私が従うのはそう言ったこととは関係ありません。あの方を尊敬してるからこそ、お側に居ます」
「大好きって事?」
「……そのような恐れ多い事、ただお側にいて助けて差し上げたいんです」
高菜はしおらしく、顔を赤らめ、いそいそと部屋から出ていった。
「大好きならそういえば良いのに、どうして言わないのかなあ?」
恋バナをしたかどうかも、息吹は分かっておらず、ただ間の抜けた空気が息吹の周りに漂っているのであった。




