悪い癖
(あんな格好つけちゃったけど、どうしよう)
神谷は廊下をノロノロ歩きながら、後悔していた。神谷の悪い癖の1つに、後先考えず宣言してしまうというところがあった。今までもそうだが、その後は追い詰められてなんとか解決するいう感じだ。
息吹の決意を見て、自分も何か息吹に応えたかった。だが今の所、策などまるでない。
(それにしても、尊治があの法力使いの血縁者だったとは……父上は知っているのだろうか)
神谷は驚いた様子を一切見せる事なかったが、心の中では激しく動揺し、今もまだ整理しきれていない。
尊治の母親を大層、帝が気に入っていたことは確かだが、そんなことは聞いた事はなかった。それに、尊治が有能な法力の使い手であるなど知りもしなかった。
(尊治は、きっと俺たちを皆殺しにする気で動いている。百目数珠が側にあるのは危険だ)
息吹の手前、ああはいったものの、七之助も正直生きてるか自信はなかった。今は一刻もはやく、尊治がどれほどの法力使いを従えてるか知る必要がある。
日差しはきつくなり、神谷はジンワリと汗をかいた。あの戦で、尊治は何を失ったのだろう。
(……いや、問題は尊治じゃない。後ろにある怨念だ)
神谷はふと考えかたを変えた。あの暗い目をした尊治は、あの頃戦に加わってはいない。
(考えようによっちゃあまだ、大丈夫なはずだ)
神谷はノロノロした足取りからキビキビと走り出した。
(尊治もまた苦しんでいる。先祖が残した負の遺産に……)
それなら、いくらでもやりようがあるように思われた。
(今すぐ、尊治に面会を願おう。俺の得意分野は相手の願いを読み取る事だ)
神谷はあの美しい白鷺城へ向かった。あの美しい青年、異母兄弟の尊治に会いに行くため……




