葡萄
息吹は食事をした後、神谷に今までの経緯をできる限り詳しく話した。随分長い時間一生懸命喋ったので、頭が途中クラクラしたが、神谷も高菜も息吹を急かす事なく黙って聞いてくれたので、息吹は頑張れた。
一通り喋りおわると、高菜が赤い色した飲み物を息吹に渡した。息吹は凄く喉が渇いていたので一気に飲み干した。甘くて冷たくて、とても美味しかった。
「この辺でぶどうがとれるの。とっても貴重なものなのよ。神谷様が貴方に飲ましたいって」
高菜は息吹に微笑みかけ、口の周りを拭ってやった。
「とっても美味しかった」
「そりゃ良かった。もう一杯といいたいところだが、そうもいかなくてな」
神谷は髪をグシャグシャ掻きむしった後、息吹の青い瞳をしっかりと見据えた。
「息吹、君はどうしたい?」
息吹は、少し黙り、だがもうすでに心の中は決まっていたようで、神谷を見つめ返し口を紡いだ。
「私は、七之助さんを助けたい」
神谷は、息吹がそう言う事予知していたようで、俺とおんなじだと言って、にっと黄色い歯を見せた。
「七之助殿は、ここいらでは有名な方だ。もし、切腹していたら俺の耳にも届いてるはずだ。……きっと尊治は迷っているのかもしれないな」
息吹は、胸の中がぎゅうっとした。二人の仲の良い姿は、今もはっきり思い出せる。
「私なんでもする」
高菜は心配しなくても大丈夫といって息吹を横にならせた。神谷は、よいせっと言って立ち上がると息吹に向かって、高らかに宣言した。
「俺は、不可能を可能にしてきた男だ。……策はすでにもうある。七之助殿は俺が救い出してみせよう」
神谷は言ってから恥ずかしくなったのか、急いで部屋から立ち去ろうとしてグキリと足をくじいた。息吹も高菜も、その後どうするか黙って見守っていたが、神谷は足を引きずりながら部屋から退散した。
部屋にはなんとも情けない空気だけが、そこに漂った。
「格好つけるときは、必ず何かしらやらかすんだから、神谷様」




