連鎖
尊治は食事をとっていた。今日は一日中雨ばかりふり、夜になっても止むことはなかった。厚い雲に覆われた、夜空はどんよりとしており、湿気が更に部屋の空気を悪くした。尊治は、庭に植えてある紫陽花の花を眺めた。束の間の休息をここで静かに取り、明日へ準備をするのが尊治の日課であった。
日中は任された領地の見回り、農民への税の取り立て、用水路の確保など、ほぼ休みはなかった。宮中からの呼び出しも多く、大半は、税の取り立ての少ない事への注意と、宮中の傭兵強化の為、人をもっと寄越すようにと請求されるものだった。
まだ18の尊治には荷が重い仕事ばかりであったが、母親が公家の者で無かった為、異母兄妹達のあたりは強く、此れまで、七之助と二人三脚で頑張るしかなかった。
そもそも尊治は母親が力を追い求め産まれた子供であった。彼女は、類まれなる法力使いの自分達の一族を誇りに思っていた。少数であった事で、危険とみなされ亡ぼされたことは、到底受け入れる事は出来なかった。気性の激しい彼女は激昂し、復讐を誓った。
彼女は百目数珠の存在を知り、直ぐに行動に移した。踊り子装い、帝の前でただ一度だけ踊った。帝の心を虜をするのは容易かった。美しい彼女に心を奪われた帝は、周囲の反対を無視し彼女に夢中になった。そうして尊治は産まれた。
だが、尊治が5つになった頃、彼女はあっけなく病に伏して死んだ。
帝は尊治に死んだ母親の面影をいつまでも追い求めた。通常ならば与えられない地位を尊治に与えた。だが、年老いた父親の愛情は、尊治に重く煩わしかった。全てを放棄できればと何度も幼き頃思った。そんな時現れたのが、ハヤテであった。
尊治の母親は自分の出世を隠していた為、ハヤテが一族を率いて、帝に牙を剥いてもお咎めは無かった。朝廷は、亡ぼしたはずの法力使い達に苦戦を強いられた。戦は三年続き、尊治は10歳になっていた。
この頃、尊治の中でハヤテは英雄となり、いつか自分もハヤテのような法力使いになりたいと思うようになっていた。
そんな時、ハヤテは一人帝と取り引きし、戦から逃げ出した。
帝は、一族の命を奪う事はしなかった。だが代わりに、二度と法力を使えないように呪符を一族の者にかけた。
この為、紫勇は優れた暗殺部隊であったが、法力を使える者は尊治と七之助だけであった。
終戦を迎え、尊治は解放されたように思ったが、大人達は決して自由になることを許さなかった。生き残った者達の恨みは根深く、ハヤテの代わりに今度は、尊治がまつりあげられた。
連鎖は続く。
誰かを殺せば、決して取り消すことはでない。
贖うとは………尊治は、暗闇を見つめ答えのない問いを、自分に問いかけるしかないのであった。




