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コウテカの庭  作者: 島 アヤメ
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団子

質素な食事。たくあんに塩むすび、具の少ない味噌汁。グルルと盛大に腹の音が響いた。


(……昨日はお魚もあったのに)


息吹は恨めしそうな目で食事を見たが、七之助は無視して早く手を合わせろといった。


「……はい」


息吹は目を瞑り、明日はお肉が出ますようにと10回早口で、心の中で唱えた。七之助は息吹の心が丸見えであったので、塩むすびを一個息吹の皿にのせた。息吹は、目を開けると塩むすびが一個増えていたので、ニッコリした。


「いただきまーす」


息吹はあっという間にたいらげて、ごちそうさまでした!と勢いよく言うと、立ち上がった。


「おい、ごちそうさまぐらい座って言え」


息吹はギギギと音がなりそうな感じで首を回した。尊治が、片眉を上げこちらを睨んでいる。息吹は勢いよく正座すると、もう一回、小さな声でごちそうさまと言い、立ち上がって逃げようとした。その時、息吹に尊治が何か投げてよこした。袋だ。息吹はまた、ギギギと音がしそうな感じで尊治の方を見た。尊治はクイと首を振り、開けるよう促した。


「わあ!!」


中に、美味しそうな団子が、仲良く串に刺さって並んでいる。息吹はすぐまた正座して、いただきまーすと言い食べ始めた。


「おい、躾がなってないぞ」


尊治は七之助を責めたが、これでもだいぶ利口になってますと七之助ははため息をつきながら返した。尊治は息吹を無視してあぐらをかき、食事を持って来させますかと七之助に聞かれたが、いやいいと短く答えた。



春は訪れたが、まだ夜の空気は冷たく、風はひんやりとしていた。空は、月が出て明るく、花見をするのにちょうどよかった。小さな桜の花びらがヒラヒラと息吹の頭にのっかった。


「帝には会われましたか」


「いや……だが情報は得られた」


七之助はそうですかと呟き、空を仰いだ。


「こやつが法力を使えるようになるとは到底思えませぬ。」


尊治は片眉を上げた。


「……ハヤテ様のもとに返された方が得策かもしれませぬ」


尊治は黙った。七之助はそれ以上何も言わなかった。息吹は、団子を食べるのを止め、七之助をじっと見た。


(今、帰ってもいいって……)


息吹は、心臓がドクンと波打つのを感じた。なんだか怖くて尊治の方は見れなかった。


尊治はややあと口を開いた。


「今更、罪悪感でも湧いたか」


尊治は、 七之助を見据え、試すように言った。


「……法力が使えないとなれば、ただの足手まといでございます」


息吹は尊治を恐る恐る見た。尊治は月光に照らされ、縁側から見える月も、桜も、尊治を際立たせる為の舞台のようだった。


「……こいつは使える。紫勇に入れることに決めた。お守り御苦労であった。ゆっくり休め」


尊治の表情は変わらなかったが、声には突き放したようなものがあった。


「……御意」


七之助は片膝をつき頭を下げた。息吹にはなんだか尊治が悲しそうに見えたが、尊治が立ち上がり背を向けた為、確かめることができなかった。立ち去った尊治の後には、涼しい風が吹き、桜の花びらが廊下に散らばった。


息吹はなんだか悲しい気分だった。二人の仲を自分が悪くさせてしまったのかもしれないと不安になった。七之助は息吹の視線に気付くと、珍しくニッコリ笑った。息吹は、目を丸くし、ごくんと唾を飲み込んだ。


「冬の間、よくぞ厳しい修行にたえたな」


七之助は立ち上がると、息吹を見下ろしゆっくり食べろと言って部屋から出て行った。


息吹はなんだか胸の中が締め付けられて、寂しかった。


だが、何もすることはできず残った団子をただ黙々と食べ続けるのであった。






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