反抗
「やはり何も知らなかったのだな……」
黒子の男はぼんやりしている息吹を見て呟いた。
「あいつが戻ってくるなど絶対に無いと思っていたが……」
尊治は苦々しく呟いた。息吹は、今は何も考えられなかった。毒づく尊治に対しても、あまり反応できなかった。
「これからお前に法力を教える。……だがこの力は忌々しく、恐ろしい力なのだ」
息吹は少しうつむいた後、何かボソリと呟いた。だが黒子の男は、そのまま喋り続けた。
「幼いお前には、まだ解らないかもしれないが……この力を持って一族を復活させることこそお前の責任なのだ」
「いいかげんにしてよ!!」
ぼんやりしていた息吹が急に叫んだので、二人は目を丸くした。
「死んじゃった人達は、確かに可哀想だけど………今やっと平和になったのにまた戦うの」
息吹の脳裏には、あの七之助の家族や村人達の、幸せだった風景が浮かんだ。
「そんな事したって意味無いよ」
だが、二人には息吹の言葉は届かなかった。黒子の男は黙っていたが、尊治の目はつり上がり、身体の周りから湯気がでているように息吹には、見えた。
「頭の悪い奴だ。……一族の無念をお前は果たさずのうのうと生きるのか?!」
尊治は激昂したが、息吹は、食い下がった。
「私には関係ないよ!!」
息吹は少し、口に出してから後悔したが、もう止まらなかった。
「もう、うんざりだよ!!大人は勝手にそっちの理由ばっかり言って!!」
尊治は息吹の胸ぐらを掴み、静かに言った。
「お前の母親が、今も朝廷で幽閉されてると知っててもか……」
ゴロゴロと、雷が近くで鳴った。
青い瞳は中を見つめ、どこか悲しげに光るのであった。




