真実
息吹は目を覚ました。頭はだるく、目はかすんでいたが、なんとか起き上がった。尊治と黒子の男が、こちらを見下ろしている。
「倭国では、贄のために、当時各地で小さな村が犠牲になった」
黒子の男は、静かに言った。
「あなたが七之助?」
黒子の男は、その名は随分前に捨てた。とポツリと言い、尊治は遮るように、続きをしゃべった。
「俺達の一族は秀でた忍の一族だった。……だが、朝廷のやつらは脅威と判断し、数の少ない俺達を抹殺することに決めた」
尊治の表情は険しく、憂いに満ちていた。
「……俺達は、倭国に葬り去られた歴史の闇なのだ」
息吹は、難しい言葉が並んだため、あまり理解できてなかったが、あの焼かれた村を思うと胸が痛かった。
「ちりじりになった我らは、一族の復活を願い、刻を待って再び集結した。ハヤテ様は一族の思いを背負った秘密兵器だった。」
気のせいだろうか。黒子の男の声はなんだか悲しそうに聞こえた。
「だが………ハヤテ様と我々の思いは違っていた」
生ぬるい風が、息吹の髪を揺らした。黒子の男はそれ以上何も言わなかった。尊治は、少し間をおき重い口を開いた。
「あの男は、英雄と敵にも言われるほどの活躍をしながら……最終的に、俺達から逃げ出した」
息吹は、それ以上聞きたく無かったが、尊治はやめなかった。
「お前と阿修羅を連れ出す事を条件に、倭国を捨て、新しい人生を選んだのだ」
遠くで雨の音が聞こえる。
雷雨がこの城にも近づいている。
息吹は先生の笑顔を思い出していた。




