変化
空はオレンジ色に染まり、美くしい白鷺の城も今は真っ赤に染まっている。
ーーカーン キーン
金属のぶつかる音が朱色の空に響き渡り、夕日の前を、渡り鳥たちの群れが通り過ぎていく。
息吹はドサリと草むらの上で仰向けになった。
「……ではまた明日」
黒子の男の姿は見えなかったが、声だけは息吹の耳に響いた。
連日、息吹は黒子の男に挑み続けたが、全く手応えは無かった。泥にまみれた顔を、息吹はゴシゴシと擦り、空をぼうっと眺めた。
(ここは、コウテカの庭から随分遠くに有るのに、空が綺麗なのはおんなじなんだ)
息吹はぼんやり、これまでのことを思い出した。今まで、どうして自分がこうなったのか
考えてないようにしてきたけれど、もうそれはできなかった。
「阿修羅……」
どうして阿修羅をあの怖い人は、欲しがったのか、先生はなんでみんなと離れて、一緒にいてくれたのか、その疑問が、息吹の心にずっと小さな棘の様に引っかかっていた。
(……お父さんお母さんってどんな人なんだろう)
ふと息吹は思った。全ての答えはそこにある様な気がした。今まで、自分には必要ないし、エマを見て羨ましいと思った事もなかった。息吹は、先生とずうっと一緒にいれるものだと疑わなかったのだ。
(ここでただ強くなるだけじゃあ、きっとダメなんだ)
息吹は起き上がり、暗くなり始めた空を見つめた。
(阿修羅も先生も諦めたくない)
息吹は新たな決意を胸に、ざっざっと歩き始めた。
冷たくなり始めた風は、色とりどりの落ち葉を落とし、冬の気配を感じさせていた。寒く長い冬の訪れは、息吹に厳しい現実と向き合う新たな試練を呼んでいるのだった。




