これから
(真っ暗……)
息吹は暗闇の中を歩いていた。不思議と闇の中は温かく、怖くはなかった。一体ここはどこなのだろうと息吹は首を傾げた。
ーーキュるる
懐かしい声が聞こえる。
(……阿修羅)
暗闇の先で、微かに青い炎が揺らいでいる。息吹は吸い込まれる様に手を伸ばした。
ぱちりと目を覚ますとそこは、見たことのない部屋だった。
(……夢を見た気がするのに、思い出せない)
息吹はぼんやり灯を見ていた。
「もう目覚めぬかと思ったぞ」
黒子の男が腕組みをして、こちらを見ている。
「どれくらい寝てたの?」
「3日だ。死なかったと感心した所であったが、やはり応えてはいたようだな……」
息吹は部屋を見回した。部屋は薄暗く、かび臭かった。窓のないこの部屋はなんだか不気味に思えた。
「ここはなんの部屋?」
「……囚人のための部屋だ」
息吹はきょとんとしていたが、それ以上の事を聞くのはやめた。
「その様子だと明日、明後日にでも始めれそうだな」
黒子の男の表情は暗くて読みとれない。
「何を?」
「お前を鍛え上げる事だ。お前の存在価値はここでは強くある事なのだ」
青い瞳に灯が映り、ユラユラ揺れている。
「……若様のお役に立てるようであれば、お前もここで居場所を作れるだろう。俺はお前の面倒を見るよう仰せ遣っている。……分かったら、とりあえず付いて来い」
息吹まだ、はっきり頭働かなかったが、とりあえず試練はクリアーした事を理解した。足元はまだフラフラしたが、これから頑張ろうという気負いだけはあった。
これから、命懸けの修行が始まるとは知らず、息吹の心は軽くはずんでいるのであった。




