英雄の弟子
早朝、尊治は庭で瞑想していた。空気は静まり、冷たさを増している。
少しずつ尊治の周りに、青い光がうっすら集まり、足元が輝き始めた。尊治は印を結び剣をかざした。途端に、閃光が走り周辺の岩達を粉々にした。木々は揺れ、風が巻き起こっている。尊治は、一息つくと、岩陰の方に視線を投げた。
「相変わらず気持ち悪い奴だ。そこでジッと見てないで、少しは相手をしたらどうだ」
音も立てず、黒子の男が、膝をついて構えていた。
「お邪魔をしては申し訳ございませんので」
「ふん……気付かれた時点で、邪魔だ」
黒子の男は左様でございますなとククと笑った。
「ここで法力を試されたの見たのは初めてでございましたのでつい」
尊治は剣を流れるように腰に収め、昇り始めた朝日の方を眺めた。
「あの餓鬼は、あいつが手塩に育てたと聞いている。今は俺の相手にはならんが……脅威になる前に、やはり殺すべきだったかもしれん。お前の横槍のせいでややこしい事になった」
黒子の男はまたクククと笑った。
「怖いもの知らずの若さまが、そこまで慎重になるとは、なかなかに面白いことになりそうですな」
尊治は、眉間にしわを寄せると性根の悪い奴だと苦々しく呟いた。
「英雄であったハヤテ様に失望されてるのは若様だけではございませぬが、ハヤテ様が御自分で選んだ道でございます。後悔はしておりませんでしょう」
あいつの話は止めろと言うと、尊治はきびすをを返しこの場を去った。黒子の男は頭を垂れ、尊治が立ち去る姿を見届けていた。
昇り始めた朝日は、庭の朝露を照らし、美しい真っ白の城を輝かせた。
英雄が育てた弟子が、今日試されようとしている。ハヤテへのそれぞれの想いが、息吹を試練へと導くのであった。




