表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コウテカの庭  作者: 島 アヤメ
22/139

もう一度

コウテカ庭は、今嵐の真っ只中にいた。風は吹き荒れ、木々をしならせた。



コウテカの庭から、ほど遠くない城もまた、嵐に耐えていた。


だが、閉めきられた、城の窓の中 、小さな灯りが灯っているのが一つ見えた。広い書庫の中で、それはチラチラ揺れている。書庫の中は、カーテンが閉められていたため薄暗く、ホコリと湿気で空気はよくなかった。


(ここに無いのかしら……)


ランプの灯りを手に取り、本のタイトルを凝視していたのは、あの金髪の美しいエマであった。彼女に、この書庫は全く似合っていなかった。


あの日から、アッカーテ一家は、エマはショックで塞ぎ込み心を閉ざしているとみんな思っていた。この家のみんながあの日の出来事で、息吹の事を忘れようとしていたが、エマだけは違ったのだ。彼女は、幼いながら、勇気と強い意志をを持っていた。たった一人の大切な友達を、ただ一人諦めていなかったのだ。


(私にできることがきっとあるはず……)


エマは、ひとつひとつ丁寧に、本のタイトルを確認した。


今まで、エマはあまり勉強熱心では無かった。このため、タイトル一つから本文を想像するのも困難だったし、勉強方法というのも全く身に付いていなかっため、今はただガムシャラに思い付くまま本を読みあさっていた。



「お嬢様……食事にされては?」



ゲリーさんの心配そうな声が、遠くから聞こえたが、今のエマには人を思いやる余裕はなかった。


「ドアの前にでも置いといて」


冷たく突き放す様にしか返答できなかったが、それも今は気にかけれない。寂しそうに去っていく足音も、今のエマには届かなかった。


(陛下が、阿修羅にこだわる理由は一体なんだろう……)


エマはあの日の事を思い出した。もう何回、夢の中で息吹に謝ったかわからなかった。


(私はなんにも分かってなかった。自分がどんなに守られていたのか)


エマは胸がギュッとっして苦しかった。不甲斐ない自分に向き合うのは、簡単じゃなかった。息吹を忘れようと何回もしたし、自分をどうにか説得しようとした。でも、どうしても納得できなかった。


(息吹は今度こそ私達をきっと許さない……)


エマはランプを握り締め、天井を仰いだ。古くなった天井は不気味で、シミはオバケのように見えた。


( ……でも私は、息吹を助けたい)


緑黄石の瞳は、ランプに照らされ燃えるように輝いてる。


(あの子は、私に風を運んでくれた。それだけで、息吹を助けたい理由は十分だもの)


エマはまた、書庫の中の本を物色し始めた。


息吹を思う人が確かにここに存在したが、今の息吹には遠く届かなかった。


(もう一度……コウテカ様)


深夜になっても、ランプが消えることはなかった。城が嵐の中、風に吹きさらされても、一つの希望のように、ランプはそっと書庫を照らすのであった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ