決心
息吹はあの後気まずい感じで登場し、高菜を苦笑させた。息吹は、もう疲れたでしょ?と無理矢理高菜を横にさせた後、側にいるから安心して寝ていいよと言い布団をかけてあげた。高菜はええと言い、優しく息吹を見つめその後眼を閉じたらすぐ寝息を立て始めた。
(やっっぱり疲れてんねんな!あの兄ちゃん嬉しさのあまり、姉ちゃんの体調とか全然気遣えて無いもんな。これだから男は自分自分って)
(でもお姉さんも嬉しそうだったよ。……クロミが様子を見たいって言うから、ホントやりにくかったよ)
(あそこは普通気になるやろ!早々に部屋から出て行く息吹の方がおかしいわ。まあその前に気配消すのも忘れるなんて、息吹まだまだやな)
(だって、お兄さんは気配消すのも大体必要ないんだよ。お姉さんも弱ってたし)
(言い訳がましいなあ。頼りないでホンマ)
息吹はむくれたが、弁解の余地は無いと悟り話を変えた。
(お兄さんどうするんだろう。あの相良って人と組むのかな)
(まあ、組むやろうな。姉ちゃんだけ迎えにきたって事はないやろ)
息吹は軽くため息をついた。
(心底キモいんやな)
(今はお兄さんに従うよ。私は駒でいた方がやりやすい)
(尊治って人、あんたがやらないかんくても?)
息吹は高菜を見つめた。
(クロミは私の記憶を見たんだよね。……尊治様は、先生と繋がってる。私が先生の命を握られたら、自分につくのは分かってると思う。でもそう言う場面ってきっと何度もあったと思う)
(相良ってやつみたいに脅して来んかったのが息吹は引っかかてんねんな)
(うん)
息吹は天井を見つめた。神谷に従うと言ったものの、心の中はモヤモヤしている。そして、自分の考えをまとめるように一言一言噛みしめながら喋り始めた。
(やっぱり数珠を壊した方が良いと思う。それで、あそこにいる人達を解放できるか分からないけど……例え魂が消える事になっても、憎しみの中で利用される方が嫌だと思うから。力なんて無い方いいんだ)
(そう一概に言えんけどな。……でも、息吹に賛成や)
(お兄さんに提案してみたい。……絶対馬鹿な事言ってると思われるだろうけど)
(国宝でもあり、国の守護的なところもあるやろうしな、説得は難しいで)
(分かってる。でもやってみたい)
クロミは宙をくるりと舞い息吹にしては上出来なんちゃう?と肩を下げた。
(クロミがいてくれてよかった)
息吹は素直に気持ちを述べた。
(死んでるけどな)
クロミは照れ隠しか、プイッと後ろを向いたのだった。