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コウテカの庭  作者: 島 アヤメ
123/139

子供同士


(姉ちゃん起きなや!)


息吹はハッと目を覚ました。辺りは薄暗く寒々しかったが、息吹は夜明けの気配を感じ取った。


(まだ何も策も練れて無いのに、今から行動おこすの?)



息吹はクロミの気配を探ったが、クロミを見つけることは出来なかった。


(ちゃうでー。絶好の機会が巡って来たで!神谷っちゅうおっさんがこっちに向かってる!1人や!どう見ても、お姉ちゃん連れて、ここから出て行くつもりやで!)


息吹はギョッとした。取り敢えず状況を整理しようと思ったが、自分はさほど賢くなかったと思い出し、クロミに矢継ぎ早に質問した。


(なんでそれが、絶好の機会かよくわかんないよ。大体お兄さん、めちゃくちゃへこんでたのに、そんな元気あるの?私を連れて行ってまたややこしくなったりしない?それにクロミどこ?)



息吹がこのように意見のを並び立てるのは珍しかったのか、クロミはケケケと笑った。



(ちょっとエネルギー充電って事で脳内にのみ話しかけるわ)


(気持ち悪い)


(聞こえてんでー)


(ごめん)


(あっ来たで)


息吹はなんだか心臓がバクバクしてるのを感じたが平静を装うよう、一息ついた。


そおっと音を立てないよう、神谷が辺りを見回しながら襖を開けた。


息吹は寝息を立ててるふりをした。神谷はそっと息吹の肩に手を乗せ、囁くよう二度ほど息吹の名を呼んだ。


「どうしたの?」


息吹は三文芝居を打ちながら、起き上がり神谷を見つめた。相変わらず髪はボサボサで、げっそりとした感じではあったが、小さな黒い瞳は前とは違うと息吹は感じた。


「息吹俺がよく見えるな」


「暗がりの中で行動するのは慣れてるから。……それよりどうしたの?」


「突然で申し訳無いが、俺と一緒に城から出て欲しい」


息吹は返事をしなかった。このように言われるのはわかっていたので、どう反応していいか分からなかった。それが逆に神谷には、驚いてるように感じさせた。


「振り回して悪いが、これから相良の元に向かう。俺は馬の扱いに慣れてないし、お前に頼みたいんだがいいかな?」


息吹は小さくいいよと答えた。それ以上何も聞かなかった。


「どうしてお前だけ連れて行くか理由を聞かないのか?」


「うん、だってこういうことは子供には責任ないでしょ。お兄さんに任せるよ」


神谷は少し息吹に元気が戻ってる事に驚いた。そんなに息吹を知ってる訳ではなかったが、小生意気な言い返し、息吹らしさがあるように感じた。


「じゃあ今すぐ、先程乗った馬の側で、身支度を整えて待っててくれ。くれぐれも他の者に見つからないよう頼むな」


「分かった」


神谷は立ち上がり、息吹を少し見つめた。一体何かあったのかと聞きたかったが、時間が無いのでやめ直ぐに部屋から出て行った。息吹は神谷が立ち去ったのを見計らってから、ふうっとため息をついた。


(何ため息ついてんのん。わたしらに運回って来てんで!)


(だってクロミのこと隠すのがなんか疲れるし)


(はあ?!そんなんチョチョイのちょいとこなさんでこれからどないすんねん!この甘ったれが!)


(うるさいなー)


息吹は半眼になって煩わしそうにしたが、心は元気であった。クロミは口うるさかったが、息吹に考える暇を与えなかった。本来息吹は考えるより勘で動くタイプだ。こちらの方があってる。


(なんか、生意気になってきたな姉ちゃん。よし、これからは姉ちゃん呼ぶのやめるわ。うーんと、息吹って私も呼ぶわ。ええか?)


(うるさいなー)


息吹は立ち上がり身支度を始めた。後ろでまだクロミは喋り続けていたが、右から左へと

聞き流した。


心の元気は息吹を本来の姿に戻そうとしていた。子供はやはり子供同士がいいのだ。




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