表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コウテカの庭  作者: 島 アヤメ
108/139

愛おしき家族達

ゆらりゆらりと回廊を歩きながら 、相良は障子から顔を出した。黒子の男達は膝をつき頭を垂れて、相良が待ちにまっていた朗報を伝えた。


「尊治様が兵をあげられました。……帝に謁見を申し立てられた模様……恐らく交渉に入られると思いますが」


半円の口はニュルと伸び、赤い唇からは嬉々として、言葉が出てきた。


「思うた通りじゃの……」


相良は相変わらずユラユラ揺れながら、男達の周りを歩き1人思案を始めた。


(あやつは神谷の背後に備える兵達を一番危惧しておる……神谷が叔母上の所にそいつらを連れて行くのは分かっておった。あの子供がもし暴走すれば神谷1人ではなにもできんからな。あやつらを連れて行かないわけがない。)


相良は白いお面の様な顔で部下達を1人1人、じっとりと眺めた。どの男も、倭国で追いやられたいわくのある者達ばかりだ。



(……我が思うた以上に尊治は早く動いた。あの子供、もしや口を割ったか。だが結果的に私の思い通りに事は運んだのだ)



「手筈通りに事を進めよ」

「御意」


黒子の男達は短く返事をし闇の中に姿を消した。


(いつもならあの長身女が、こちらにも目を光らせているのだが、やはり手薄だな……父上の下まで尊治は、あの殺し屋どもを連れて来た……くくく)


雨上がりの夜空で、大きな満月が明るく空を照らしている。相良は空を仰ぎ、愛おしそうに月を見上げた。


「父上せめてもの情けでございまする……」


(愛しき息子に葬られれば、苦しみからも解放されましょう)


「ははははっっはっ……はははははっははは」


相良は笑いを堪えきれず遂に声を上げて笑い出した。暗い城内でこだまする相良の声は、不気味に響き渡り、月で照らされた夜空には相応しくなかった。




「さようなら。……私の愛しき家族達よ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ