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青_____《大人と子ども》②


「あんた、響君となんか約束してたんじゃないの?」


「いや…?」


母親の問いかけに首を傾げつつ、まだ仕事着のままだったことを忘れて自室から玄関へと向かった。



扉を開けると「よっ」と手を掲げて挨拶し、笑いかける男子高校生が目の前に。地毛が元々茶系である響の髪は一見黒髪だが、陽に当たると赤毛に見える。襟足短めの爽やかショートヘアーだが、目にかかるほど伸びてしまった前髪は横に流してピンで留めている。またそのピン留めがお花型のデザインだったことから、響のものではなく女の子物だと分かる。


(そして女の子からそれを借りてるあたり、響ってば、学校でモテてるんだな〜)


年寄りくさいだろうけど、小さい頃から知っている響が異性にモテることに妙な感心をしてしまう。

なんかこう、やっぱりなーとか、これから彼女できたりするんだろうなーとか。

(顔立ちは可愛いし、人見知りもないから好かれてるんだろうな)



制服姿のままではあるが、リュックや荷物などは一切ない点を見て恐らく一旦自宅に帰ったんだろう。

まあ、一旦帰宅するも何も、家が向かい同士だから

すぐ目の前に響の家が見えるわけなんだけど。



「おっつかれ!紗世姉が仕事終わって家に帰ってくの部屋の窓から見えてたからさ。そいえば最近話せてなかったし、ちょーっと会いにきた」


「よっ」の挨拶の時に挙げられた響の手は、そのまま私の肩にポンと置かれた。


「何が"ちょーっと"よ。お母さん達みたいに立ち話好きなくせに」


「まあね。てか家に入れてくれないの?部屋にはあげてくれないわけ?」


「図々しいわ!」


私が大学生時代までは、小中高時代よりは少なくてもたまに会ってはお喋りしたり、家族ぐるみでご飯を食べに行ったりしていた。 今年は私が社会人1年目ってことで忙しくて、家が近いものの会う機会はほとんどなく。


(今日会って話したのが、多分4ヶ月ぶりとか)


「そいえば、紗世姉なんか今日元気なかったよね」


「どうして?」


「部屋の窓から見えたって言ったでしょ。紗世姉の歩き方トボトボって感じだったし、考え事しながら歩いてる感じだったから疲れてんのかなーと思って」


家が近いことは便利でもあり、恐ろしいとも思った。響でなくても 他の誰かにもその様子を見られていたかもしれない。


それに、歩き方とかに出てるくらい落ち込んでいるのが様子に表れていたとは。すれ違う知らない人に見られるのは構わなくても、家が近く、親同士の繋がりもある人に見られるのはとても恥ずかしい。


思考がトリップしていたことにハッとして、目の前の響に目を向ければ腕を組んで床一点を見つめ何やら考え中。


「…響?」


「…よし」


何が"よし"なのか、頷いた響は顔を上げてニコッと私に笑いかけると、早口に言った。


「明日仕事休みでしょ? 明日の朝10時に紗世姉の家の前に集合。遊びに行こう。んじゃ、また明日ねっ!」


「ちょっ、!!?」


男子高校生の行動力は早かった。

私が頭にはてなを浮かべている間に、翌日の予定を作ってしまった。


「一日中寝れると思ったんだけどな…」


迎えに家に響が入ったのを見てから玄関の扉を閉めて、ボソッと呟いたのは本心だが、可愛い可愛い弟分との久しぶりのお出かけもまあいいかと頬がかすかに緩んだ。


《続》

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