逆カーレースゲーム
2025年、逆カーレースゲームなるモノが登場した。
これは時代の必然と言えた。
まず、カーレースゲームって、あれ?
と思うだろう。
そう、ゲームセンターにある、ボックスのあれだ。
正面にはモニタ、前にはハンドル、ギア、
足下にはアクセルとブレーキ。
スタート音とともに、モニタの風景が流れ出す。
レース場だったり、市街地だったり。
車が走り出すと、隣の相手やネットの相手やコンピュータと対戦し、
抜きつ抜かれつのレースを繰り広げる。
そして、右手を突き上げ、勝利の雄叫びを上げるのである。
だから、逆カーレースゲームとはこれと逆になるのだ。
さあ、逆カーレースゲームを始めよう。
まず、微笑み、「お願いします」と礼をして始める。
こんな始まりは、カーレースゲームとは逆と言えるだろう。
日本の武道を取り入れているわけではない。
それから、左右、バックを確認し、ゆっくりとスタートさせる。
これも、逆。
ゆっくり発進すると言っても、正確な時間や安全を競っているわけでもない。
ちなみに最新のバーチャルリアリティー技術を用いているので、
左右や後ろも、現実のように確認できるのだ。
車が進むが、ストップ。
一旦停止だ。
交通違反は厳禁。
もちろん、信号もだ。
横断歩道に子供がいれば、もちろん止まる。
止まらなくてもいいが、後で心証が違ってくる。
質問に答えながら、市街地を進んで行く。
目的地の病院に着いた。
「ありがとうございました」と言って礼をする。
これで終了。
どうだろう。
これは逆カーレースゲームと言わずにいられない。
そして、最後に・・・
ガチャリ、200円が装置から出た。
100円硬貨を投入せず、お金がもらえるのだ。
逆だ。
ゲームじゃないだろうって?
そう、ゲームの逆だからゲームじゃない。
これはれっきとした仕事のようなものだ。
2020年を過ぎると、政府は老人の買い物難民に本格的に取り組みだした。
これは老人を大切にすると言う思惑の他、
経済効果を狙って、老人にお金を使わせるためだった。
当初、自動運転システムに期待したが、
安全、信頼性の両面で不安が残り、
一部特区で実施したが、事故が多発した。
そこで政府は、VRを利用した遠隔運転システムを導入した。
つまり、さっきは遠隔操作の車で老人を病院に送り届けたのだ。
だが、完全な仕事にしてしまっては、利用料金が跳ね上がってしまう。
そこでゲーム感覚を取り入れ、
大人が小遣い稼ぎをできるようにした。
某業界からは反対されたが、おおむね好評だ。
老人、運転する大人、産業界など。
遠隔技術は自動運転、人工知能と共に日本の産業の柱とも言えた。
逆カーレースゲーム、
将来、あなたもお世話になるだろう。
一お年寄りとして。