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M・P・G ~私の庭に死角はない!~  作者: 皐月乃 彩月
二章 大農園主になったようです。
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7話 どうしてこうなった!?

 

「どうしてこうなった……?」


私は目の前の光景を、遠い目で眺める。

あの日から1ヶ月、私の妖精一覧は村人の名前で一杯になった。


「なぁ、頼まれてた仕事終わったぞ、次は何すればいい?」


私に声をかけたのは、糞ガキ、もとい村人妖精1号のカルナ。

1ヶ月前はあんなに痩せ細っていたのに、今では栄養が行き渡っているのか成長期でぐんぐん背が伸びつつある。

私の背は伸びないのに、何だかムカつく。


「……次は果樹園で収穫して、林檎と葡萄がそろそろだから」


「分かった!」


カルナは快活にそう答えると、村の西側に配置している果樹園に向かって走っていた。

連日の労働の疲れもみられない。


もう一度言おう。

どうしてこうなったっ!?


まずは、カルナだ。

散々にこきつかってるのに、寧ろ楽な仕事だと言わんばかりにせっせとよく働く。


まじか、カルナ。

私だったらこんなブラック企業、3日で辞める。 

異世界の労働環境どんだけ悪いんだ。


「クレイ様、おはようございます。此方は運び終えましたので、次は家畜の世話にまわります」


村に住む腰の曲がった老婆が私に気付くと頭を下げ、嬉々として次の仕事に向かう。

他の村人もすれ違う度に、生き生きとした爽やかな挨拶を私にした。


そう、問題は他の村人だ。

あれからカルナの話を聞いた村人達が、次々に頭を下げ私に雇われる為に押し寄せた。

私はカルナと同じ条件に+して、所有している土地も要求した。

が、これまたあっさり快諾(あと、前の私を力で追い返した奴は二発程殴らせてもらった。)

大した作物も採れない枯れた割りに税だけは重い土地なので、村人達は寧ろ喜んで差し出した。

結果、村の土地は全て私の庭となった。

ついでに、指を酷使し過ぎて今は中指の出番が回ってきた。

人差し指は休憩中である。


なので、今では工房も全部配置し多種多様の作物を収穫出来る大農園だ!

こんな要求を小娘相手にあっさり飲むとか、困窮し過ぎでしょ。

村長まで、私の庭で働き出す始末だし!!

しかも、腰曲がってよぼよぼなのに、よく働いてるよっ!?

どんだけ、ヤバかったんだこの村……いや、領主がアレだからしょうがないのか?


そんなこんなで私のブラックな目論みは、見事にうち壊された。

前の私の記憶があるとはいえ、私の感覚は前世日本で培ったもののままだった。

嘗めていた……強靭な異世界平民魂を。


辛苦を味あわせるどころか、彼等は嬉々として働く。

寧ろ、生活も労働環境もずっと良くなった。

大人も子供も皆がよく働くお陰で、生活に余裕が出てその分で私から嗜好品を買う位だ。(勿論、嗜好品はゲーム内売値の3倍で売りつける)

私も得する、村人も嗜好品が手に入るのでWinWinな関係だ。

断じて、悪徳商売じゃない。


「……ここまで来ちゃったら、もう村を出るのは無理じゃね?」


私は活気が溢れるようになった村を、遠目で見つめて1人ごちる。

ほんの数ヶ月ですっかり様変わりしたものだ。


村、滅んじゃうよね……。

いや、所有権あるから遠隔操作出来るのか?

それでもまぁ、流石に今更見捨てるのは罪悪感が付きまとう事には違いない。

………………記憶を思い出した時に、とっとと出てけばよかったかな?


後腐れなく出ていく筈が、いつの間にか私はこの村に地に足付けてしまっていたようだ。


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