6話 妖精という名のどr……
「あの時は俺達が悪かった! 何でもするっ! お前が望むなら、俺の命を差し出したっていいっ!! 頼む、助けて欲しいっ!!」
清々しい朝……の筈が、家の前で糞ガキが地に頭を付けて動かない。
これでもう何日目だろうか?
糞ガキは毎日何時間も此処へ来ては、へばりついている。
窓を開閉する時、目に入って気まずいったらない。
何だか、私が悪い事をしている気持ちにさせられるのだ。
くっ、糞ガキめ、卑怯な手を……私の精神力がゴリゴリ削られてるじゃないかっ!
初めとはうってかわって、糞ガキは真剣に私に頼んでいる。
諦めて帰るか、準備を整えて村人全員で攻めてくるかと考えてたのにこれは意外だった。
故に私が意地悪をしているかのように、錯覚してしまうのだ。
うーむ……どうしようかな?
まぁ、確かにむかつく相手といえど、全員くたばればいいとまでは思ってない。
子供に罪はないって言うしね。
まぁ、私に全く関係ないとこで知らずに死んでいる分には、別にどうでもいいんだろうけど……。
「別に命とかいらないんだけど……というか、貴方にそこまでの価値ないから」
糞ガキよりも、どっちかっていうと血縁上の父親とか妹とか後妻とかの方がムカつくし。
それに、たかが村の子供1人売り払ったってたいした金にもならないからね。
「頼む! もう、頼れる所は他にないんだっ!!」
私の言葉に顔色を青くしながらも、必死に食い下がる糞ガキ。
必死すぎて、またもや私のライフを削る。
…………………………………………………………………………………………………………………………………………しょうがない、か。
薄情な村の奴等と違って、私はそれなりに優しいからね。
何も出ないけど誉めてくれてもいいんだよ?
私は渋々村に援助をする事を決めた。
勿論、嫌々なので無償ではしないが。
「……分かった」
「本当かっ!!?」
糞ガキはこけた顔を上げ、目に喜色を浮かべた。
「ただし、タダではあげない」
「あぁ、俺の命と──「貴方の命にそんな価値ないから」……じゃあ、何を……?」
さっきも言ったのに、この糞ガキはやたら命をかけたがる。
厨二なのかな?
そんな金にならない上に、重いものいらないから。
「勿論、労働に決まってるでしょ。……そうね、1日働けば一キロの野菜をあげる。この村では破格のもんでしょう? 後、当たり前だけど私の命令には絶対服従で」
まぁ、前世の感覚だとおおよそ日当千円以下、超ブラックバイトだけどね!
人手が欲しいと思ってたから丁度いいし、一応糞ガキも私もWinWinだし。
「一キロ……分かった、やる! 何でもするっ!!」
一キロあれば家族が生きてくには困らない量、糞ガキはすぐに頷いた。
よし、滅茶苦茶こきつかってやろう。
私は前世を含めると精神年齢30オーバーであるけれど、子供相手でも容赦はしない。
過去の事を許した訳じゃないから、ブラック企業の社畜以上に酷使してやる。
契約成立、そう思った瞬間、私の手に持つ端末が震え出した。
『ピコーン! 新しい妖精が仲間に加わったよ!』
………え?
ポップな電子音と共に聞こえた声に目を向けると、画面には糞ガキによく似たアイコンが表示されていた。
“新しい妖精だよ、仲良くしてね☆
カルナ(13)
ギフト:無し
─お仕事の条件─
毎日、野菜を一キロあげる代わりに、クレイに絶対服従”
え? どういうこと?
というか、お仕事条件に絶対服従ってそれ妖精じゃなくて奴隷じゃない?
このギフトには、私が知らない能力がまだまだあったらしい。