3話 衣食住は無事解決!
「よしよし、初収穫~ぅ!」
このゲームでは、作物によって数十秒単位で種蒔きから収穫まで出来る。
ちょっとした時間にやる分には、最適のゲームなのだ。
「はぁ……お腹すいた。この際生でいいからこの人参食べたい……ピーマンでもいいし」
空腹が紛れるかと思い始めたゲームだが、寧ろ収穫した作物を見て益々空腹がつらくなった。
食べれないのに、ひたすら収穫するなんて……虚しい、虚しいよ、このゲーム。
「これから、どうするかな……父親に頼るのは論外だし、ギフトもこんなだしな……王都に行けば、ゲーセンみたいな感じでこのゲームでも多少金取れるかな……?」
道具的には異世界のものだし、物珍しさで暫くは食っていけそうだ。
「でも、このゲームじゃあ、なぁー。せめて、格ゲーとかなら需要ありそうだったのに……」
正直、勝ちも負けもないこのゲームでは、皆珍しさに惹かれた一見さんばかりになってしまうだろう。
「本当……どうしよ……」
私は日本でぬくぬくと生きていたのだ。
飢えに苦しんだり、困窮したりした事はなかった。
バイトだって、週に1、2度の緩いシフトだ。
そんな普通の大学生が、いきなり異世界でサバイバル生活とか無理ゲー過ぎる。
「食べ物、食べ物食べ物、食べ物ぉー……もう、雑草でも何でもいいから食べる……か? なんだ、この緑のボタン……初めて見る。アップロードか? 別に異世界でそこまで求めてないよ」
寧ろ食べ物だせよと、見慣れないボタンを見ながらにして思う。
もう終わりにしてあの雑草を引っこ抜きに行こうと、最後にそのボタンを押した。
「…………へ?」
押した瞬間、目映い光と共に私が先程ゲーム内で収穫した人参が目の前に現れた。
つん、と恐る恐る指でつつく。
触感は前世で触れた人参そのものだ。
「ま、まじで本物っ!?」
その瞬間理性がとんだ。
毒味やら何やらもしないで、生で人参にかぶり付く。
「ほ、本物だぁ、おいしぃ゛っ」
空腹は最大のスパイスとはよく言ったもので、私は無我夢中で口の中に放り込んだ。
クレイは死んで今の私になったけれど、記憶自体は記録として受け継いでいる。
最後に食べた雑草は苦くてゲロマズだった。
けれどこの人参は収穫時品質が最低ランクだった筈なのに、瑞々しい食感と仄かな甘みが最高に美味しかった。
「神様、ありがとう! 糞ギフトだと思ってたけど、めっちゃチートギフトだったよっ!!!」
このギフトがゲームのアイテムを全て実体化出来るなら、それはとてつもなく破格のギフトだろう。
このゲームは、生産出来るものの幅がかなり広い。
食べ物は勿論、服や装飾、お金を貯めれば家などの建築物も入手出来るし、生産をサポートする妖精なんかもいたりする。
そして、前世このゲームをやり込んでいた私のレベルはカンスト済み……ここまで来れば、笑うしかない。
「チート万歳っ!!」
これで異世界衣食住問題は全て解決だ!
私は先程まで空腹で泣きそうな顔を一転して、笑いながらふんぞり返った。