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M・P・G ~私の庭に死角はない!~  作者: 皐月乃 彩月
六章 終わり良ければ全て良し、なんです。
26/29

26話 突然のピンチ

 

「皆ーぁっ、何で私から逃げるのぉっ!?」


野太い声と騒音をたてながら元妹が、取り巻きだった少年達を追い回している。

私の予測通り、どんな外見でも愛さえあればOKという強者は居なかったらしい。


「……今日も平和だなぁ」


作戦が成功してからというもの、元妹は私に構う暇がないのか前のような茶番劇を仕掛けてくるのはなくなった。

あの後、馬肉クリームで見事傷1つなくなった元妹を、教師に引き渡して私の復讐を完遂した。

元妹は教師に抗議したみたいだが、行き過ぎた妨害の証拠なんてないし強化された肉体は元には戻らない。

お陰様で私は平穏な生活を送っている。

その分、取り巻きであった少年達は地獄を味わっているのだろうが。


うん……筋肉ゴリラでぶりっこはキツいな。


ほんの少しだが追い回されている彼等に同情してしまった。

逆の立場であったなら、普通に泣く。


「……ん? んん? アドルフ殿下が居ない?」


追い回されている少年の顔を見ているうちに、私はあの派手な第一王子がその中に居ない事に気付いた。


……取り巻き達を肉壁にして、自分は逃げた、とか?


人の事をどうこう言えるものではないが、中々汚い王子である。


この時、私は全てが終わったと思っていた。

だから、完全に油断していたのだ。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







私は1人で廊下を歩いていた。

前までは警戒して1人にならないようにしていたが、今はもう心配する事はない。

人目が無いのを良いことに、ぐいっと伸びをして自由を謳歌していた。


「──来い」


直前まで人が居ることに気付かなかった。


「は? ちょ、ちょっと!!?」


背後から急に声をかけられ、腕を掴まれて抵抗する間も無く私は空き教室に連れ込まれた。


「ちょっと、いきなり何す、る……アドルフ、殿下?」


文句を言おうと相手の顔を睨み付けると、そこに居たのはアドルフ殿下であった。

驚いて言葉が詰まる。


何故こんな所に殿下が……いや、それよりも何故殿下は私を此処に連れ込んだのか?


いきなり強引に連れ込まれた事といい、とてもじゃないがこれが良いことには思えない。

証拠は隠滅しているが、元妹の件で事の真相を突き止めたのかも知れない。

嫌な汗が背筋を伝う。

初めて王子様に会った時も冷や汗が伝っていたが、今回はその比ではない。

何より心の内が全く読めないのに、薄ら笑いを浮かべているアドルフ殿下が不気味でしかない。


「クレイ・ツェルイル。お前はの評判は聞いている随分と優れたギフトを持っているようだな。お陰でレダートの持つ領地は随分と潤っているようだ。父上がえらくお前の事を評価していた」


アドルフ殿下はそう言って、私に舐めるような気持ちの悪い視線を向けた。


「……それは、お褒め頂き有り難う、ございます。ところで、私はレダート殿下の婚約者という立場でありますので、こういった事は……」


元妹とやって頂きたい。

口には出さなかったが、少し咎めるような目を向けて私は掴まれた腕を振りほどこうとした。

この際不本意だった立場(王子様の婚約者)も利用する。

アドルフ殿下が危ない眼をしている。

一刻も早く此処から立ち去るべきだ。


「いったっ!?」


だが、そんな私の願いもむなしく、振りほどこうとし腕は更に強い力で掴まれた。


「……父上が、愚かにも次期王はレダートが良いと言い出したのだ。俺こそが王に相応しいというのに……お前もそうは思わないか、クレイ? あぁ、お前は美しいな。ギフトと言い、その容姿と言い、レダートには過ぎたものだ」


アドルフ殿下の掴んでいない方の手が、私の頬を撫でた。

瞬間、気持ち悪さに鳥肌が身体中に出た。


きもいきもい、マジでキモいっ!! 


「っ申し訳ございませんが、私は婚約者一筋ですのでっ!」


この変態勘違い野郎とは比べるまでもない。

王子様はたまにアレだが、優しいし誰よりも格好いい。

流されたとは思わないでもないが、アドルフ殿下が私の腕に無理矢理触れた途端、確かに私は思ったのだ。

この人じゃない、と。

私の王子様はアドルフ殿下ではなく、レダート殿下なのだ。

…………多分、……きっと。


「……そうか。なら仕方がない、な。出来れば自らの意思で従属を選んで欲しかったのだが……仕方がない」


仕方がない、と言いつつもその目は爛々としている。

私の拒絶に素直に従うとは、とてもじゃないが思えない。


「なぁ、クレイ。クレイ、俺のギフトが何であるか知っているか?」


アドルフ殿下のその言葉に一瞬私の動きが止まった。


ギフト?


知らない。

学園ではギフトを大々的に明かしている者もいるが、特段明かしていない者も多い。

王子様はギフトの無効化だと言っていた。


なら、アドルフ殿下は? ──


「俺のギフトは”魅了“だ、クレイ。だから、お前の意思など関係ないんだ」


アドルフ殿下は先程まで私の頬を撫でていた手を、私の額へと翳した。

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