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M・P・G ~私の庭に死角はない!~  作者: 皐月乃 彩月
五章 G・G・K作戦、決行するようです。
25/29

25話 そして、逆ハーは解散した。

残酷描写に一応注意です。

 

──元妹への復讐の為に始めたこの作戦。


──結果から言おう。

























──元妹は此方の目論見通り、見事ゴリラ化した。




「……凄まじいな」


「……えぇ……それにしても、彼女もよく生き残りましたね。途中、何度も駄目だと思いました」


全てが終わった時、そこに立っていたのは幾千もの戦いを乗り越えたかのようなゴリラだった。

筋肉は隆々に盛り上がり、目は血走って瞳孔が開いている。

つい数時間前まではゆるふわタッチだった外見も、今では劇画タッチが似合う外見に変化していた。

服装も染み1つなかった制服がビリビリに破れ、大事な所を辛うじて隠すだけになっている。


「長い、戦いでしたね」


元妹は中々に粘った。

王子様の言った通り、わんわんは超兵器であった。

私はとんだ誤解をしていたようだ。

殺さないように手加減をしたので、元妹は何度も助けを呼び逃げようと走り回った。

だが、悲しい位に圧倒的な戦力差。

それでも、頑張った方だと言える。

初めは手加減してほんの少し。

それが段々と使う力が強くなっていった。

その結果がコレである。

元妹は今もわんわんと対峙したまま、死闘を繰り広げている。

危うい場面は何度もあった。

直撃はさせなかったが、元妹の手足は傷だらけだ。

ここまで来ると、見てるだけの此方も手に汗握るものがある。

身体強化をしていても、その気力はもう限界。

次の一撃で勝負がつくだろう。


「う゛オ゛ォ゛ォッッオ゛ォ゛オ゛ッッッッ!!!!」


元妹の変わり果てた野太い声が辺りに響く。

元妹は最後の力を振り絞り、わんわんへと向かっていった。

きっと、この世界の主人公が元妹であったのならわんわんはご都合主義で敗れていただろう。

けれど、現実は無情。

元妹の拳はわんわんの頭突きによって、軽く砕かれた。


──まぁ、私も勝ちを譲る気は毛頭なかったけどねっ。


元妹は意識を飛ばしたのか、とうとう地に崩れ落ちた。

勝負あり、だ。


「無事目的も達成した事ですし、これにて作戦は終了ですね!」


後は証拠隠滅の為に、この馬肉クリームを塗りたくってついでに口の中にも押し込んどけば完璧というもの。


「と、いうことで。行ってきてください、シリル君っ!」


私はポケットから取り出したクリームをショタに押し付けた。


「嫌だよ、何で僕がそんな事を。クレイちゃんが自分でやってよ。そもそも僕、あの女嫌いなんだよね。近付きたくないし」


心底嫌そうに眉を下げて、ショタは馬肉クリームを押し退けた。

そして、薄々感じていたが元妹を相当毛嫌いしているようだ。

ショタコンとは、元妹は本当に節操がない。


「だって、万が一目を覚ましたら私じゃ危ないじゃないですか」


距離を取った状態ならともかく、流石に近距離は危ない。


「いや、僕のギフトも戦闘系じゃないからっ! クレイちゃんはあの犬型兵器があるけど、僕は戦闘手段なんて一切ないんだからねっ!」


ちっ、男気がない奴だ。


私は心の中で舌打ちをした。

これだから背が伸びないのだ。


「どうやらショタは使えないようなので、王子様お願いします!」


王子様ならいざという時も自身のギフトでなんとかなるだろうという判断から、私は王子様にショタに突き返されたクリームを差し出した。

視界の端で、僕は頭脳労働担当なんだとショタが喚いている。


「……お前達、最近俺の扱いが少し雑ではないか?」


苦い顔をしながらも、王子様は私からクリームを受け取ると元妹の倒れている場所へと足を向けた。


「そんな事ないですよ、イケメンだと思ってます! よっ、格好いいー!!」


「……やはり、誉められているようには聞こえないのだが……」


口笛が上手くふけずヒューヒュー風の音を建てている私に、王子様は振り返って困った顔をしながらもしょうがないといったような笑みを浮かべた。

その困ったように笑った顔が、何だか私をこそばゆい気持ちにさせた。


「……帰ったら、ケーキをお腹一杯に食べるとするか」


きっとお腹が空いているのだ。

復讐も完遂した事だし、お祝いの意味でもいいだろう。


私は嫌々元妹に馬肉クリームを塗りたくっている王子様は見て、満面の笑みを浮かべた。








◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








「皆ーぁっ、何で私から逃げるのぉっ!?」


野太い声を上げながら、ドタドタと大きな音を立てて廊下を走る女生徒が、同世代の中でもきらびやかな少年に達向かって駆け寄っている。

ここ最近ではお馴染みの光景だ。

つい先日までは少年達が女生徒の側に寄って行っていたのに、今ではそれが様変わりしている。

それどころか、追いかけられている少年達の顔は青い。

その光景を目の当たりにした者は、その様子を嘲笑うか同情の眼差しを向ける者の2つに別れていた。

それでも自業自得だろうと、助けを差し伸べる者は一人も居なかったのであった。

何だか王子が不憫に……。

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