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M・P・G ~私の庭に死角はない!~  作者: 皐月乃 彩月
五章 G・G・K作戦、決行するようです。
24/29

24話 やっぱり最強だった説

 

「ちょっ、何なのよこれっ、棄権するわっ! ねぇ、聞こえてるんでしょっ!!? 早くコレ(・・)止めなさいよっ!!!」


元妹が泣き叫んでいる様子を、私達は少し離れた所から見ていた。

わんわんを投入してから5分。

必死に逃げ回っている中、元妹は早くも白旗を上げたようだ。


「ふふふふっ、今までの分とくと苦しむがいいっ!」


今の私は相当黒い笑みを浮かべている事だろう。

きっと今の私はあの悪役令嬢な公爵令嬢よりも、悪役令嬢がお似合いだ。


「……殿下、棄権を訴えていますので試験を終了にしたいのですが……」


そんな私を青い顔で見つつ、試験官である教師が恐る恐る王子様に声をかけた。


「何を言っているんですか先生! まだまだこれからですよっ!」


半殺しにして力を使わせてゴリラ化するまでヤらないと、と私は邪魔すんじゃねえぞオーラを出しながら怯える教師に訴えた。

こちとらこの日の為に一匹数億円もするわんわんや高級品である馬肉クリームを、溝に捨てるつもりで望んでいるのだ。

この程度で終える気は更々ない。


「……と、言うわけだ。殺しはしないし、傷1つ残る事もない。気になるようだったら、席を外して貰っても構わない」


ニコリと私と同様に黒い笑みを浮かべる王子様。

流石王族というものだろうか、有無を言わせない力がある。


「……本当に無理は……無理はしないでくださいね」


教師が権力に屈した瞬間だった。

教師はそう言った後、ふらふらとこの場を離れて行った。


ごめんなさい先生。

罪悪感はなくもないけど、それとこれとは話が別なので。


私は心の中で頭を下げて、去り行く教師を見送った。


「あっ、おしいっ! かすっただけかぁ」


ショタの声に視線を元妹に戻すと、わんわんから出たビームが元妹の頬をかすった所だった。

当たらなかったビームが背後にある木々に命中し、焦げた臭いがここまで届いている。

残念だ。


「……あの、これは当たったら死んでしまうのでは?」


何処か遠い目でその光景を眺めてヴァイスは言った。


……そうだな、流石に頭に当たるのはヤバいか……も知れない。

けれど、私は馬肉クリームの効能を詳しく把握している訳ではない。

ここは馬肉の隠されたポテンシャルを信じて──


「……そうかもね。クレイちゃん、ユニコーンの角は肉体欠損も治せる筈だけど、殺さない予定なら避けた方がいいかもよ。手足を狙うといいよ!」


「はーい、了解でーす」


信じようと思ったが、ショタからのアドバイスに素直に頷いた。

残念だが、ここは従うことにする。


「いえ、そうではなく……これはかなり過剰戦力なのではないかと」


「あぁ、薄々想像は出来ていたが……これでは追い込む前に死に至るだろうな……少々、悪のりが過ぎたか」


そんな私達とは反対に、ヴァイスと王子様は遠い目をしていた。

心なしかヴァイスの顔が青い。

今からでも俺の手の者を呼ぶか、と王子様は呟いた。


「問題ありませんよ! 今はわんわんが優勢ですが、あの女が本気で力を使えば戦況はひっくり返されますから!」


私は王子様の呟きに否を唱えた。

今は優勢だが、所詮は王子様達に瞬殺されたわんわんだ。

ゴリゴリの戦闘系のギフトを持つ元妹が本気を出せば、瞬く間に捻り潰されるであろう事が容易に想像出来る。

今日のこの作戦もゴリラ化するまで、わんわんを何度も投入し続ける心積もりで挑んでいるのだ。


あ、数十億円が塵に帰るって思ったら何か涙が……。


「いや……クレイ、勘違いしているだろう」


「えぇ、あの兵器が相手で戦況の逆転はまずあり得ないです」


しかし、そんな私とは反対に、王子様とヴァイスは揃って首を横に振った。

その顔には本気で言っているのかと書いてあるように見えた。


勘違いとは何の事か。

王子様達にわんわんが破壊されたのは事実の筈。

ギフトを持たないものにはわんわんは有効だろうが、あんなんでも元妹は戦闘系の強力なギフトを持っている。


「勘違いも何も、わんわん瞬殺した方々が何言ってるんですか。王子様達の方が超兵器でしょう」


私はそれで現実というものを知ったのだ。

上には上がいると。


「……やはり、勘違いをされてますね」


「だな。俺のギフトについて、クレイは知っているものと思い込んでいた」


私の発言に王子様達は何故か納得したかのように頷いた。


「? 確かに知りませんが、どうせ戦闘系でしょう?」


勘違いってまさかそれなのだろうか。

まさかのわんわん非戦闘系のギフト持ちに瞬殺された説が浮上してきた。

それが事実だったら立ち直れないかもしれない。

私はとんだ思い上がりをしていたのか。


「いや、俺のギフトはギフトの無効化や弱体化をさせるものだ。俺の時はクレイのギフトをほぼ無効化させていたから倒せたが……あの女では力を十全に使ったとしても勝ち目はないぞ」


王子様から明かされた事実に私は目を瞬いた。

私はどうやら思い違いをしていたらしい。



──ゲームでそうであったように、この世界でもわんわんは最強兵器説が再び浮上した。



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