23話 いざ決戦?
途中、視点変わります。
そして、いよいよ作戦実行の時がやって来た。
この日まで、元妹は私とすれ違う度にわざと転んでみせたり、度々いちゃもんをつけて茶番劇を繰り広げてきた。
勿論、ただでやられる私ではないので、元妹が転んだらそれより派手に転んでみせたり、茶番劇には茶番劇で応戦した。
……そのせいで一部の貴族の女性とからは眉をしかめられているが。
まぁ、元妹悔しそうな顔を見られたのでよしとしよう。
「だが、それは今日までの事! 明日からそんな茶番劇はもう終わりですっ!」
仮に絡んできたとしても、作戦が成功した後ならやっても無駄だろう。
すれ違う時に転んでもゴリラが相手では何やってんの? 状態であるし、ゴリラでぶりっこされてもドン引くだけで絵的には此方が恐喝されているように見えるだろう。
と言っても、解散した逆ハーの男達を追いかけるのに必死で、私に絡む暇はないだろうが。
私はそんな風に考えながら、元妹がのこのこやって来るのを待ち構えた。
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「──何よ、実技試験って。此方はそれどころじゃないっての」
イライラしながら道端の石を蹴り飛ばす。
私は実技試験を受ける為に、学園から少し離れた森を歩いていた。
森の奥に設置してある試験合格の証を数々の障害や妨害をクリアして、1人で取りに行くというのが試験内容だ。
前回は学園内で行われたというのに、今回は数日前に校外で行うと直前で発表があった。
全くもって面倒くさい。
「何で私がこんな所にっ、アドルフの力で免除に出来ないの」
誰も見ていないせいか、ついつい私の口から不満ばかりが溢れてしまう。
「そもそもアドルフもアドルフよっ、あんな女の言葉を真に受けてっ!」
全て上手くいっていた筈だった。
婚約破棄の断罪イベントも発生した。
それなのにあの女が現れてから、全てがおかしくなってしまった。
あの女の出鱈目な話を聞いてから、アドルフ達は私とほんの少し距離を置くようになった。
「全部、全部あいつのせいよ……モブの分際で……っ」
大人しく死んでいればよかったものを。
死に損ないの分際で、何故私の邪魔をするのか。
ゲームでは、ヒロインの意地悪な腹違いの姉は開始前にとっくにくたばっていたのに。
「レダートは私のモノなのに……シリルやヴァイスだって……本当に邪魔」
どうすればあの女を排除出来るか。
今までみたいにすれ違う度に転んで足をかけられたと言おうとしても、あの女は此方の考えを読んで一緒に転んで回避する。
その際、まるで私が突き飛ばしたかのようにされるオマケ付きでだ。
ありもしないことをでっち上げるなんて最低だ。
泣き真似をして苛められたと言っても、向こうも涙を流して同じことをやり返してくる始末。
今までやって来たやり方がまるで通用しない。
公爵令嬢の時は向こうも仕掛けてきたし、簡単な事だったのに。
何て性格の悪い女。
あんな女レダートには相応しくない。
「……やっぱり、アドルフにもう1度──」
ガサリ、と前方の草木が揺れた。
何かいるようだ。
そう言えば、試験の監督役である教師が妨害役を投入していると話していた。
恐らく、その妨害役とやらであろう。
私は音のする方へと身構えた。
『わんわんっ!』
軽快な鳴き声と共に、その妨害役が姿を現した。
「…………犬?」
草を掻き分けて出てきたのは、鉄で出来た犬だった。
この世界では見慣れない造形。
まるで、前の世界にあった玩具のような。
『わんわんっ!!』
鳴き声とともに、玩具のような犬の目が赤く不気味に光った。




