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M・P・G ~私の庭に死角はない!~  作者: 皐月乃 彩月
四章 G・G・K作戦、始動するようです。
19/29

19話 その喧嘩、買ってしんぜよう。

 

目の前には明らかな修羅場。

声をかけられたのは、王子様。


ならば、私のすべき行動は──


「さらば、殿下っ。私はどっかに行ってきます!」


A.見捨てて逃げる


これが正解、1番被害の少ない選択だ。


ごめんね、王子様。

貴方という犠牲(生け贄)は忘れないからっ!!


「待て……行かせる訳がないだろう? 俺達は運命共同体、死なば諸ともと言うやつだ」


そのまま足を進めようとする私の肩を、ガシリと王子様が強い力で掴む。

無言でぶんぶん腕を振るうが、全く外れない。


この、離せ王子様。

私はあんなカオスな状況に足を踏み込みたくない。

そして、いつから運命共同体になったんだ。

私は1人だけでも生き延びる!

て、本当に外れない、ちょ、元妹が私に気付いちゃったじゃんっ!?


「レダート様ぁ? その方は誰ですか?」


まるで、浮気相手の女を見つけたかのような物言いで、王子様に問い詰める元妹。


いや、貴方にはたった今泥沼3角形を演じたアドルフ殿下がいるでしょうが。

それも、貴方が泥棒ネコポジションで。


「……ほら、行くぞ。もう逃げられまい」


王子様はそう言って、私を連れていった。

勿論、腕は外さずに。


「……やっぱり、私は不幸の星に生まれたんだ」


修羅場に巻き込まれる私は、まるで売られていく子牛の気分だ。

ため息しかでない。


「お前が女連れとは珍しいな、レダート。それが例の娘か?」


王子様の横にいる私を、値踏みするようにアドルフ殿下はじっと見た。

何が例なのかよく分からないが少し不愉快だ。


「お初にお目にかかります、殿下。私は、」


「レダート様っ、聞いてくださいっ! マリーベル様が酷いのですっ!!」


私を遮り、言葉を挟む元妹。

進んで話したいわけではないがイラっとする。


おい、人が話してんのに割り込むんじゃない。

お前が私を巻きこんだんだろうが。


しかも、私に何の反応も示さない。

元妹はまだ私に気付いていないという事だ。

私は何年経ってもすぐに分かったと言うのに、癪にさわる。

先程まで気付くなと思っていたのに、気付かなければイライラするのは複雑な乙女心というやつだろう。


「……こほんっ、彼女はクレイ・ツェルイル。先日、ツェルイルの家の養女となった」


微妙な空気を振り払うように咳払いを1つすると、王子様は元妹を無視して私の言葉の続きを代わりに言った。


「クレイ・ツェルイルです。どう、」


「えぇっ! あまり言いたくないですけどぉ、その方レダート様の地位と財産目当てなのではないですかぁ? 養女ってことは、平民って事ですよねぇ? 貴方も、身の程を弁えないと。貴方は誰でも良いのだろうけれどぉ、流石に王子殿下に付きまとうなんて不敬ですよぉ。そういうの、いけないと思うんですぅっ!」


またまた私を遮る元妹。

そして自らの事を棚に上げ、あからさまに私に喧嘩を売ってくる始末。


あ゛あ゛ぁん゛?

この女言うに事をかいて、私をビッチ扱いだとっ!?

その言葉、現在進行形で王子殿下に付きまとっているお前に返しやるよっ!

その喧嘩、倍で買ってやろう。


私の額にビキビキと血管が浮き上がる。

ここまで散々虚仮にされれば、腹も立つというものだ。

私の横にいる王子様も、元妹のあんまりな言いようにドン引きしている。

思う事は同じなのだろう。


「君の方こそ無礼だぞ、キアージュ伯爵令嬢。付きまとっているのは君の方だろう?」


私の気持ちを代弁して、王子様が口を開く。

その視線は実に冷ややかだ。


「まぁ、レダート様っ。私の事はチェルシーと名前で呼んでくださいっ!」


ぷんぷんと擬音までつきそうな、元妹のこの発言に私は目が点になった。


こ、この女ヤベェ。

話が通じない。


元妹は私達とは別の世界を生きているらしい。

その耳はただの飾りで、自分に都合のいい所しか聞こえないようだ。


「そう言うな、チェルシー。その娘はレダートの婚約者だぞ?」


そんな元妹の腰を抱き寄せ、宥めるようにアドルフ殿下は爆弾を落とした。

そう特大級の爆弾を。


え?

何それ聞いてない…………。


無言で王子様に視線を向ける。

王子様の視線はアドルフ殿下に向けられており、無言の肯定。

知りたくなかった、私が知ろうとしなかったまさかの真実。


私にはいつの間にか婚約者が居たらしい。


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