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M・P・G ~私の庭に死角はない!~  作者: 皐月乃 彩月
三章 権力には勝てなかったようです。
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15話 運命は天下無双

 

「何ですか、これは? 鉄の犬?……、ギフトでしょうか?」


ヴァイスが俺と犬モドキの間に立ち、剣を構えた。

犬は先程からずっと、わんわんと繰り返し鳴き声を上げ続けている。


「五月蝿いな、耳障りだ。ヴァイス、弱体化させるから仕留めろ」


そう言って俺が手を翳すと同時に、犬モドキが俺達に飛びかかる。

弱体化をかけた以上、簡単にヴァイスの剣に切り裂かれるだろう。

正面から向かってくる者で、今までそれで仕留めきれなかった相手は居ない。


「はいっ!」


ヴァイスは急激に減速した犬モドキに、自身のギフトを纏わせた重い一撃を振り下ろした。

バキリ、と鈍い音がする。


『わんわんっ! わんわんっ!』


その犬モドキは弱体化させられヴァイスの攻撃をくらってなお、立ち上がり向かってきた。


「殿下っ!!」


完全に仕留めたと油断したヴァイスは咄嗟の対応が出来ず、一瞬の隙をついて脇を抜けられる。

そして、犬モドキは真っ直ぐに俺の元へと飛びかかった。


こいつ……っ!?

力を制限しているのが俺だと分かっている。

この犬モドキにはある程度の知能があるっ!


俺は身体を横に逸らしつつ、剣を引き抜いて犬モドキの攻撃を防いだ。

その攻撃は想像以上に重い。

弱体化させてなお、この力とは。 

使用しなかった場合、俺は只ではすまなかっただろう。


「っっ!!」


押し返す時、犬モドキの爪が腕をかする。

大した傷ではないが、見た目とは裏腹にとんでもない兵器だ。


「殿下っ!!」


ヴァイスが犬モドキへと追撃し、右足をへし折った。


これ程とは……。


「ヴァイス、この犬モドキは危険だ。完全に無効化するっ!!」


俺は戦法を変えて、犬モドキを完全に無効化させる事にした。

無効化は細かい制御が難しく、味方も使用不可能になるのが難点だが、得体の知れない相手な以上仕方がない。

俺は抑えてたギフトを全開で使用した。


『……ぅ゛ぅ゛、わん、……わ……』


俺のギフトを浴びた犬モドキは、よろよろと奇妙な音をならしながら地面に崩れて行動を停止した。

すかさず、ヴァイスが犬の腹に剣を振り下ろして破壊する。

無効化を解いた後、また攻撃されると困るからだ。


「……これは、何なんでしょうか? ゴーレム、が近そうですが……あのように殿下に弱体化されてなお、あの力とは……しかも異常に硬いですね。この剣はもう駄目みたいです」


そう言ってヴァイスに見せられた剣は、歯こぼれしていた。

一体どんな素材で作られているのか。


「それはおいおい本人に確認するとしよう……どうやら、次が来たようだ」


今の戦闘を見ていたのか、少し離れた所から攻撃しようとしている先程と同じ犬モドキが目に入った。

口から淡い光を放っており、何らかの遠距離攻撃をするつもりなのだろう。

俺達は再び戦闘に入った。


これ程の兵器をこんな田舎村に配備……戦争でもする気なのだろうか?









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆











「怪我をしたものは今治療しろ。それ以外はこのまま俺と共に村に入るぞ」


犬モドキとの戦闘の結果、此方の勝利に終わったが怪我人が1人出た。

連れてきていた治癒系のギフト持ちに指示を出して、怪我人を治療させる。

 

「殿下も治療をした方が」


「必要ない。この程度、日常茶飯事だ」


ヴァイスは俺の腕を見て、治療を進言したが断って先に進んだ。

治療といっても傷薬を塗って、包帯を巻くくらいだ。

ここで時間をかけて、逃げられてしまっては困る。

俺は自分持つギフトの能力から、俺自身に直接的に働きかけるようなギフトは無効化してしまう。

悪いものは勿論の事、良いものに関しても。

俺は治癒系のギフトによる治療を受ける事が出来ない。

だから、剣を学んだ過程で出来た傷痕や、過去に受けた暗殺未遂で負った傷痕も残っている。


「では、行くぞ」


俺は周囲五メートル程にギフトで無効化をかけて、村へと入った。

怪我を負ってるというのに、気にならない程に気分は高揚していた。




「これは……この村は、貧しい村だと聞いていたが?」


村の中に入って、まず目に入ったのは豊かな緑に溢れた畑だった。

トマトに茄子に、胡瓜……人参やキャベツといった野菜が季節に関係なく育てられている。

それもその多くが実をつけて。


「はい、その筈ですが……まさか、これもギフトで? もしかして、この村にはギフトを持った者が複数いるのでは?」


「えー、そうかな? 入る前は、そんな感じはしなかったけど?」  


先程の兵器との整合性が取れない事からヴァイスは複数だと予測したが、シリルはそれを否定した。

つまり、あの犬モドキもこの彩り豊かな野菜達も1つのギフトによるものだということだ。


「あ、村人発見! 貧しい村とは思えない、栄養状態みたいだね。服も綺麗なのを着ているし……取り敢えず、殿下。あの村人に王族の名前出して聞いてみれば? さっきのは此方の身分を知らないからこそ、襲いかかってきたんだろうし。知った上で王族にいきなり襲いかかるような馬鹿は居ないだろうから、上手くいけば本人も出てくるんじゃないかな?」


さっきの襲撃も村の防御の為かも知れないけど、王族に手を出した事実は変わらないからね、とシリルは俺に進言した。

確かにそれなら、弁解の意味でも本人が出てくるかもしれない。

本人が出てこなくとも、此方は見分ける事が出来る。

代理人等で誤魔化される事はない。


「そうだな。ヴァイス、頼む」 


「はい、殿下」


村人へと駆けていくヴァイスの後ろ姿を見送ると、俺はもう一度村へと目を向けた。

この村には妙な外観の建物が多くあった。


一体、何の為の建物何だ?

野菜ばかりに目を向けていたが、彼方には水田や南国の果物まであるし……作物成長系のギフトなのか?


「あ、村人が走ってった……僕らもついていく?」


ヴァイスが話しかけていた村人が、驚いて青い顔をすると何処かへ駆けていった。


「あぁ、勿論」


俺達は駆けていた村人の後をおっていった。


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