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M・P・G ~私の庭に死角はない!~  作者: 皐月乃 彩月
三章 権力には勝てなかったようです。
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12話 墓穴掘った……

  

カルナの後を恐る恐る着いていくと、玄関の扉の前には人だかりが出来ていた。

そして、その中心には神々しい程のイケメン。


オーラ的にこの人がこの人が第2王子……?

確か前の私の記憶だと、名前は……レダート、だっけ?

やっぱり、王子様ってのは何処の世界でもイケメンなのが定石なのかね。


どうしても、女子ゆえなのか顔に目がいってしまう。

だって、イケメンだ。

この村ではまず見られない程のイケメンなのだ。

カルナも栄養が十分になってからは、多少見られる顔になったが王子様には遠く及ばない。

……まぁ、カルナは過去の事で大分マイナスされて雰囲気イケメン枠にカテゴライズされてるから、生粋のイケメンと比べるのは酷何だろうけど。


「あぁ、君かな? この村を覆ってる力の持ち主は」


私が王子様の顔をガン見していると、向こうも私に気付いて声をかけられた。

柔らかな笑みを浮かべていて、特に怒ってるようには見えない。


チョロまかした件は関係ない……?

いや、安心するのはまだ早い。

警戒をといた瞬間、逮捕されて連行されるかもしれない。

油断はまだ出来ない。


「お初にお目にかかります、殿下」


私は前の私の記憶から引っ張りだして、王族にする最上位の礼をした。

こんな事をするのはこの体では数年ぶりだが、体に染み付いていたので何なく出来た。

前の私の母が死ぬまでは貴族教育はきちんとされていたし、亡くしてからも時々練習していたのだ。

前の私は、私と違って真面目だった。


「……君」


顔を上げると驚いた王子様と目が合う。


え、何で?


「これだけ強力なギフトを持つ以上、先祖に貴族の血が混じっているとは思っていたが……君は直系だね? それも中々高位の。君の名前を聞いていいかな?」


王子様は確信した様子で私に尋ねてきた。

距離も数歩詰められ、精神的にも追い詰められた感じがする。


し、しまった!


私の背を冷や汗が流れる。

私はやらかしてしまった事を瞬時に理解した。


そうだよね、最上位の礼なんて下位貴族どころか平民では到底必要ないよね。

しまった。

どうしようっ!?

ただの平民で通せばよかった!

脳筋色ボケ糞野郎の所へ連れていかれちゃうかも!?


「どうした? 名乗れないのか? ……俺はね、君の事をずっと探していたんだ。けど、君の存在は最近になってようやくシリルが感じ取れた位だ……君は力を隠していた? それとも、君の()が隠していたのかな?」


そんな私の困惑を意に介する事なく、王子様は詰問を続ける。

そこには初めの柔らかな笑みはなく、絶対零度の微笑みだった。


隠す……?

それに、シリルって誰だよ??

ソイツが私の事をチクったのっ!?

てか、あれ?

連れ戻されるよりも悪い方に話が進んでない!?

何か別の意味で疑われてないっ!?


「も、申し訳ございませんっ! 実は私の親は冷酷非道な人間のクズで、私は能無しとして捨て置かれていたのですっ! しかし、大したお金もなく、飢餓に苦しんで、火事場の馬鹿力と申しましょうか。私は最近ようやく自分のギフトを使いこなすに至ったのです! 決して隠したり、王家に対しては反逆の意があった訳ではございませんっ!!」


私はこれ以上誤解を生む前に、必至になって弁解した。

ついでに、脳筋色ボケ糞野郎を生け贄に差し出し、私はあくまで被害者アピール。

あの野郎は別にどうなっても構わないからね。

寧ろ、天罰が下ればいいと思うよ。


「最近まで使えなかった? ……だから、僕のギフトでも全く探せなかったのかな?」


王子様の側に居た背の低い美少年が、首を横へと傾げた。


おい、ショタ。

お前か、お前のせいなのかっ!


私は全ての元凶とも言える犯人が分かり、心の中でこれ以上背が伸びなくなるよう呪った。


「な、何だか今凄い悪寒がした」


ショタは私の怨嗟に気付いたのか、つむじを隠すように手を頭に添えた。


「君の言い分は理解した……それで、君の名は?」


「く、クレイ・キアージュと申しますっ」


王子様の問いにすぐに私は答える。

相手は王子、逆らってはいけない。


「クレイ・キアージュ? ……それは本当か?」


しかし、正直に答えたと言うのにまたも疑われた。

解せぬ。


「本当です! だから、私はあの脳筋k……父の治める領地に暮らしているのです」


幼い私を連れて、移動できる距離はそれほど遠くない。

領地だけはそれなりの広さなので、移動は長旅になる。

そんな金や体力を前の私達は持ち合わせていなかった。

それが、私がこのド田舎の村で暮らしている理由だ。


「……そうか、君は知らないのだな。確かに、君の言う通りならキアージュ伯爵は冷酷非道な人間なのだろう」


王子様は一息つくと、そう話始めた。

何だか含みのある言い方だ。

私は嘘なんてついていないのに。


「……クレイ・キアージュは10才の頃に亡くなったと、届け出が出されている」


王子様は私の表情の変化を見逃すまいと観察したまま、私の知らない事実を話す。


は、い?

何だと……死んだ?

クレイが?

あぁ゛んの糞野郎っっ!!





後にこの時の私の顔は鬼のようだったと、ショタは言った。


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