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ある日、俺はスラム街を歩いていた。目的はスカウト。暗殺者ギルドは常に人員が足りてない。特に人族。ターゲットは人族が多いから抵抗があるんだろう。獣人の方が暗殺者になりやすい。という訳で地面に転がっている連中を見て回っているが、ほとんど目が死んでる。ここまできたら使い物にならない。
あー、どこかに荒んでいるが生きる気力を持っている奴は落ちていないかな。生きるためなら何でもやるって奴。
しばらくスラム街を徘徊していると、小さい子供達がワラワラと集まってきた。俺は袋いっぱいに持ってきていたパンを1人につき1個あげた。袋が空っぽになると、子供達は綺麗に散って行った。
あの中に暗殺者に向いてる子が数人いるが、まだ幼いため声をかけずにいる。あともうちょっと、あともうちょっと、とマゴマゴしている内に冒険者の方に行く子もいる。
それでも稀にスカウト成功するから、この撒き餌はやめられずにいた。
そんな俺の思惑を知らない連中は、俺の事を善人扱いしてくるから、笑えてくる。
悪いが俺は偽善者だ。