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俺は子供の頃はよく喋るガキだったが、大人になるにつれ無口になった。普通ならボッチになるところだが、不思議と俺の周りには人が集まってくる。
俺はそれが鬱陶しいかった。ボッチになりたい。ボッチ最高。孤独を愛してるんだ。一人にしてくれ。
そんな俺の思いとは正反対に今日も俺の周りは騒がしい。
何故だ⁉︎
俺に一方的に話しかけている魔女をジッと見る。誰かと目を合わせるのは久しぶりだ。
すると、急に話すのを止めて周囲をキョロキョロと目をやったあと、顔を赤くして俯いた。
勝気で明るい彼女が黙ると、酒場が少し静かになった気がする。沈黙した彼女の代わりに戦士が喋り始めたが、俺が目を合わせると、また黙り込んだ。次の冒険者も同じ反応を示した。
目を合わせただけなのに、俺たちの席はまるで誰かが死んだように静かになった。