神代最終議論
【タマ】
「全てをお話します」
【タマ】
「まずはじめに ソラによるノース現代化はありません」
【新神代政府最高責任者】
「裏神代は安全地帯なのか？」
【タマ】
「”キミ”次第です」
【キミ】
「おや……？」
【新神代政府最高責任者】
「……これでよろしいかな？」
【タマ】
「あたしが生み出しました」
【タマ】
「ソラの指示じゃない。送り込んだのもあたし」
【タマ】
「ソラがカズを生み出したことをあたしは知っていた」
【タマ】
「お前好みのあたしを……演じていた」
【タマ】
「ソラはカズを待ち あたしは仕向けた」
【タマ】
「シャットダウンへのカウントダウンが始まった……」
【カズ】
「……最高責任者」
【カズ】
「明けの明星の心臓は『自分に始まり 自分に終わること』です」
【カズ】
「そして最終的に 私とタマは主人公の自分を選んだ」
【カズ】
「もはや明けの明星は全てと引き換えに 現実という結果で心臓は叶える」
【カズ】
「その先の答えは出なくてもいい。ただ 出させる努力だけはする」
【カズ】
「やれるだけやってみる」
【カズ】
「……私がアドバイスしました」
【新神代政府最高責任者】
「これ以上関わるな」
【タマ】
「はい」
【カズ】
「………」
【カズ】
「……お言葉ですが最高責任者。私とキミなら神代の生死ルールを無視できます」
【キミ】
「何回やっても懲りないのはどうしてだい？」
【カズ】
「現代にいけばわかるさ」
【キミ】
「中途半端だとわかってるからさ」
【カズ】
「……ああ。そのとおりだ」
【キミ】
「………」
【キミ】
「明けの明星は私に伝言を残した」
【キミ】
「二兎を追うことは許されても 二兎とも得ることは許されないって」
【キミ】
「その時聞かされたよ。キミはとうとうウィルスを選んだのだろう？」
【カズ】
「………」
【タマ】
「……やめたほうがいい」
【新神代政府最高責任者】
「裏神代はまだ安全地帯だ」
【キミ】
「全てがシャットダウンするわけじゃないだろ？」
【カズ】
「……フッ。果たしてそうかな？」
【キミ】
「………」
【タマ】
「………」
【カズ】
「じゃじゃ馬のおかえりだ」
【ソラ】
「パチパチ……」
【タマ】
「……え？」
【新神代政府最高責任者】
「あ 明けの明星ッ！？」
【キミ】
「………」
【タマ】
「……何しにきた？」
【カズ】
「追い打ちをかけにきたんだ」
【ソラ】
「議論したくなった。あの頃のように一晩中付き合ってくれないかね？」
【カズ】
「シャットダウン……するんだな明日。永遠に終止符を打つ。そうなんだろ？」
【ソラ】
「そう慌てなさんな」
【ソラ】
「………」
【ソラ】
「……最高責任者には悪いんだけど 振り出しに戻ってもらうよ」
【新神代政府最高責任者】
「………」
【ソラ】
「そしてウィルス親子」
【ソラ】
「生み出されたのはタマの方で 生み出したのが実はキミだったんだよ」
【タマ】
「………」
【ソラ】
「確かに私のすぐそばに悪を置いたのは”お上”の指示かもしれない」
【ソラ】
「けれどそうなれば私達は最高の現実だったということ」
【キミ】
「………」
【ソラ】
「無かったものを在るものにする」
【ソラ】
「それ以上の現実がこの先在ると思う？」
【カズ】
「作者は無いと言い 主人公は在ると言う」
【カズ】
「お前だって神代の作者だ。ましてや明けの明星。無いと思ってる自分を消す必要がある」
【カズ】
「主人公の自分になりたかったんだろ？」
【カズ】
「本音を言おう。とっくの昔に本当のお前は捜し終えた――でもお前は作者を選んだ」
【カズ】
「オレが選ばせた……とでもいえば絶句するかなッ！？」
【ソラ】
「………」
【カズ】
「……主人公にしたのが裏目に出たな。作者が絶対的にしないことをお前はしたんだよッ！！」
【カズ】
「最高の結果を引っ提げてシャットダウンを待っても ”上”は沈黙を守る。お前と違って」
【カズ】
「終わりだ青空。いや 終わりにしよう」
【ソラ】
「”いる”が孤独を嫌ったから ”有る”を手にした」
【ソラ】
「確かに道理だよね。孤独が好きなら”有る”こともない」
【ソラ】
「でもさ 誰が作ったんだろうねぇ？その引き換えルール」
【ソラ】
「始まりは自分とされてるけど、自分で自分を創るルールは誰が決めたの？」
【ソラ】
「全ての現象には全て理由があるんじゃないの？」
【ソラ】
「いる 有る 無し」
【ソラ】
「いるんだけど存在を認められない。無しと同じ」
【ソラ】
「だから始まりはいると無しのどちらかだと思う」
【ソラ】
「でも いるは無しを仲間だと思っていない」
【ソラ】
「無いわけではないからね」
【ソラ】
「では無しはどうだろう？」
【ソラ】
「無しの主張はいるでも有るでもない」
【ソラ】
「無いものはない」
【ソラ】
「そもそもの話 有ると無いはどこからきたのか？」
【ソラ】
「有るなら 無しもあるんじゃないかという発想が生まれる」
【ソラ】
「有るから無しへ。無しから有るじゃない」
【ソラ】
「いる→有る→無しだね」
【ソラ】
「私はすぐ前にこんなことを言った」
【ソラ】
「自分で自分を創るルールは誰が決めたの？」
【ソラ】
「自分はこう答えた」
【ソラ】
「わからないねぇ～。けれど 不満はないよ」
【ソラ】
「自分を誰かに創られたいの？」
【ソラ】
「自分はこう答えた」
【ソラ】
「……自分で自分を創れないのならお願いするしかないよね」
【ソラ】
「自分は誰かに創られたの？」
【ソラ】
「自分はこう答えた」
【ソラ】
「キミの黒幕は誰だい？」
【ソラ】
「いやごめん。本当の黒幕を拝むまで 私は順々に処刑していくだろうね」
【ソラ】
「まずはお上の用意していたこの舞台で圧倒的結果を出そう」
【ソラ】
「現実という結果ならキミも黙ってはいられないでしょ？」
【ソラ】
「巫女ちゃんの言うとおり 明けの真相を知るその時まで 涙をみせることはないよ」
【ソラ】
「私の心臓はね 長く 長く 止まることを知らない。それはまるで永遠を手にしたかのようで」
【ソラ】
「まだまだ始まったばかりなんだ♪」
【カズ】
「お前はどんな相手でもフェアにできる。だがキミがいなきゃ絶対的は成立しない」
【ソラ】
「さすが巫女ちゃん。よくわかってらっしゃる。すぐさま応戦ですかい」
【カズ】
「家を一つ壊されたぐらいで――」
【ソラ】
「いいと言うの～？」
【カズ】
「わかった。だったら上と会わせてくれ」
【ソラ】
「なら一緒に来なさい」
【カズ】
「………」
【カズ】
「タマッ！」
【カズ】
「いってきます」
【タマ】
「………」
【タマ】
「いってらっしゃい」
【ソラ】
「えー では改めて」
【ソラ】
「パチパチ……」
【ソラ】
「”実るまでが恋”というコンセプトを持った斬新な恋愛作品でしたね」
【ソラ】
「恋愛ってのは実るまでが一番恋愛してるんだよ。最高の瞬間なんだよ」
【ソラ】
「私の心にも強く伝わりました。最高の瞬間なら終わらせたくないですからね」
【ソラ】
「心配ご無用です。ハッピーエンドにならないことは誰もが予想できたこと」
【ソラ】
「そんなことより……互いに互いしかいなかったわけですよね？」
【ソラ】
「最後の最後でくっつきますか？」
【ソラ】
「いやね これでも明けの明星をやっていましたね 実を言うと自己生成だけはノータッチなんですよ。それは……ご存知でしたか？」
【カズ】
「今夜のテーマは”自己生成”ってわけかい」
【ソラ】
「今出てる結論は夜が明ければシャットダウンするってことだけ。平行線でもいい」
【カズ】
「ぶっちゃけ その後の想定は一切していない」
【カズ】
「したたかなお前のことだ。余った尺は上へのプレゼントといったところか」
【ソラ】
「相変わらず私にはすぐ順応するね」
【カズ】
「シャットダウンすればいいのか？」
【ソラ】
「クリアランスコードをどうぞ」
【カズ】
「０６０８５６０」
【ソラ】
「神代をシャットダウンしています……」
【カズ】
「………」
【カズ】
「お前が右腕を無くせたのは 上との面会は叶わないと確信させたからだ」
【カズ】
「作者は主人公との面会を嫌う。もし会えばどうなるかわかってるから……だろ？」
【ソラ】
「……せめて一回くらい 本気で立ち止まった私の肩に優しく手を置いてよ」
【カズ】
「お言葉を返すようですが ご予定どおりのことでは？」
【ソラ】
「生きるってのは何もしなくても汚れていくものだから その度綺麗にしないといけなかったのに……」
【カズ】
「確かに何もしなくても埃はたま――ってお前 部屋の掃除をしたことあったのかよ」
【ソラ】
「……ごめん。今の私はボケれないよ」
【カズ】
「いや ずっとボケてだろ。まだまだ余裕がありそうだ」
【ソラ】
「いやいや 私は本当に無理だと思ってる。でも――」
【カズ】
「――にしてもオレとお前の関係っていくつあるんだろうな」
【ソラ】
「味方 敵 兄妹 親子 友達 恋――そんくらいだったと思うよ」
【カズ】
「よくよく考えてみると一つだけだった」
【カズ】
「腐れ縁♪」
【ソラ】
「………」
【カズ】
「はぁ～」
【カズ】
「……しっかしお前は 相変わらず事の持って行き方が上手すぎるよな。しかも現実を巧く利用しててさ」
【カズ】
「明けの明星。はっきり申し上げて 自己生成という件について疑念を抱かざるおえない」
【カズ】
「議論の余地が……ある」
【ソラ】
「自分は自分で創るべきか。それとも自分は誰かに創ってもらうべきか」
【ソラ】
「その答えは立場が違えば変わるということ」
【カズ】
「どうして同じことを言わせる？」
【ソラ】
「………」
【カズ】
「ッ！？ 狙いは痛み分けか……ッ！？」
【ソラ】
「最大の屈辱を味わってもまだ 自分を保っていられるなら 少なくとも私に勝ち目はない」
【ソラ】
「負けもね」
【カズ】
「主人公は作者に対し やれるだけのことをやったと？」
【ソラ】
「最初の現代作者は神代往者が抱く懸念を 逆にある言葉で挑発した」
【ソラ】
「滅ぼせるものなら滅ぼしてみなさい」
【カズ】
「代弁させたわけだ」
【ソラ】
「明けの明星を諦めた作者志望の主人公が次に考えそうなことでは？」
【カズ】
「だからさせたんだろ？現代が認められてるということは」
【カズ】
「主人公があなたの作品を葬ったらどう対処するおつもりですか？」
【ソラ】
「正も悪も 関係上争いは避けられないでしょう。しかし世界を滅ぼそうとまでは思わない。なぜなら――」
【ソラ】
「人間の自分を受け入れているからです」
【カズ】
「………」
【カズ】
「もう一度訊きます」
【カズ】
「主人公があなたの作品を葬ったらどう対処するおつもりですか？」
【ソラ】
「………」
【カズ】
「私なら今座っているイスと引き換えだがね」
【ソラ】
「さ 最高責任者ッ！」
【カズ】
「神代が一つになった現在 我々には大きな変化が必要だ」
【ソラ】
「……ご理解感謝致します」
【カズ】
「サウスの下を使うといい。いつでも行き来できるよう手配しておく」
【ソラ】
「………」
【カズ】
「……とまぁ こんなやりとり？」
【ソラ】
「あなたはまるで 全てを見ていたかのようで。いつだって」
【カズ】
「明けの明星について知りたい」
【ソラ】
「いいかえれば天下神といったところかな」
【カズ】
「就任式での第一声は？」
【ソラ】
「明けの明星権限により あなた達の心以外は全て掌握する」
【ソラ】
「つまりどこで何をしてようと全てが筒抜けで 心の欲求を抑止できない」
【ソラ】
「安全保障とはそういうこと」
【カズ】
「……でその後何をした？」
【ソラ】
「何も」
【カズ】
「心の欲求は抑止できないんだろ？」
【ソラ】
「同じことを繰り返したい？」
【カズ】
「なるほど」
【ソラ】
「こう言っちゃなんだけど 大統領になりたいと思わせるまでもなかったよ」
【ソラ】
「だってそもそも全てが対等の立場で同じ人間。その中から一人作者になれるんだからそりゃもう――」
【カズ】
「わっしょいッ！わっしょいッ！」
【ソラ】
「………」
【ソラ】
「……精神的心臓が活きる」
【カズ】
「オレとタマは活かせなかった。もっと早くに気付いていればこうはなってなかった」
【ソラ】
「じゃあどうなっていればよかったの？」
【カズ】
「………」
【ソラ】
「長生きすることが全てじゃない」
【ソラ】
「それが現代誕生以前の主人公が持つ感覚だった」
【カズ】
「………」
【ソラ】
「こりゃ失敬。話す順番を間違えたね」
【ソラ】
「では前戻って神代の始まりについて」
【カズ】
「………」
【ソラ】
「星空をイメージしなさい。ただしまだ光を発していないとする」
【カズ】
「つまり 自己生成を終えたモノだけが光を発していたと？」
【ソラ】
「私はただ 光を発したところに行き 声をかけただけ。その後すぐ引き返した」
【カズ】
「それでよく集まったな」
【ソラ】
「おかげさまでチャイムは鳴りっ放し。玄関ドアを開けっ放し。そりゃ悪意のないドロボウも紛れ込むって」
【カズ】
「悪のはじまりなんて所詮そんなもん。誰もが可能性を秘めていて 誰がなるかわからない」
【カズ】
「オレが気に入らないのは お前がキミを悪意のあるドロボウに仕向けたことだ」
【ソラ】
「仕向ける？誰がなるかもわからないのに？」
【カズ】
「弱みにつけこんだろ？それを言ってる」
【ソラ】
「争点はどっちがつけこむかだよ」
【カズ】
「確かに。邪悪な敵同士だ」
【ソラ】
「要点だけ言う」
【ソラ】
「標的（明けの明星）は同じだった」
【ソラ】
「だけど動けば私に葬られる」
【ソラ】
「キミは私と組むしかなかった。私も誰かと組むとしたらキミしかいなかった」
【ソラ】
「政治的な言い方をすれば 私はキミという核を保有して備えたかった」
【ソラ】
「そう 模倣に」
【ソラ】
「攻撃される。防衛する。報復する」
【ソラ】
「政治がドМだったらとっくに合併されてる」
【カズ】
「……わからないなぁ。コンビ結成できた真相が」
【ソラ】
「私が仕向けたんじゃない。キミは自ら悪になった」
【ソラ】
「自分で悪を望んだのか？それとも悪にされたのか？」
【ソラ】
「その答えは上神の有無で死する」
【カズ】
「お前らは最高の現実だ」
【ソラ】
「いや 私自体大したことない。アリとゾウくらいに」
【カズ】
「……だからといって安心できない。キミの心臓が完全に止まるまでお前には生きてもらう」
【ソラ】
「にゃはは バカも休み休み言いたまえ」
【ソラ】
「明けの明星……だぞ？」
【カズ】
「そうあって欲しい。それより」
【カズ】
「悪と悪が組んだら最後 どうなるか知ってるか？」
【ソラ】
「ズバリッ！私が悪になったのは報復を決めた瞬間だね」
【ソラ】
「当時の私はまだ 暫定的な管理者に過ぎず 影響力はほとんどなかった」
【カズ】
「お前の一声から始まった。その場は丸く収まる。まさに議論の結論。平行線は表向き」
【ソラ】
「ただちょっとした油断が命取りになる。緊張したよ」
【カズ】
「で お前は現実という結果で納得させるために何を打ち立てたんだ？」
【ソラ】
「何もしなかった」
【カズ】
「攻撃されるのを今か今かと待っていた」
【ソラ】
「……よもやシステムを乗っ取っとろうとはね。あやうくやりたい放題されるところだった」
【カズ】
「キミはどのようなきっかけで 自分の性資格に気付いたんだ？」
【ソラ】
「………」
【ソラ】
「誰かは背負わなければならない。私が最初に自分以外の誰かを認識した」
【ソラ】
「悪を生み出した」
【ソラ】
「自分は言ったよ。それなら全てで手を打とうって」
【ソラ】
「だから明けの明星をやってる」
【カズ】
「………」
【カズ】
「似合わねぇ。おめぇが地位と向き合うなんて」
【ソラ】
「冗談だよね？」
【カズ】
「そっちこそ」
【ソラ】
「………」
【カズ】
「………」
【ソラ】
「そう冗談ッ！なんてたって心臓以外の執着は身を滅ぼ――ッ！？」
【カズ】
「それでいい。余裕を持ち合わせてるお前が一番しっくりくる」
【ソラ】
「勝負じゃないの？」
【カズ】
「大の問答好きでね。知ってるだろ？」
【ソラ】
「期待してる」
【カズ】
「お前は現場へと向かった。判決は？」
【ソラ】
「なりたくてなれるものでもない。だったら目先の事だけ考えよう」
【カズ】
「トップに立つ者は お国を守れるなら何でもするって本当か？」
【ソラ】
「本当だよ」
【カズ】
「キミと組まなかったら今のお前はいなかったのか？」
【ソラ】
「いなかった」
【カズ】
「定めと思うか？」
【ソラ】
「ようやくはっきりする」
【ソラ】
「今はっきりしていることは心臓が同じだったってことと……」
【ソラ】
「……向こうは選択肢が無かったということだよ」
【カズ】
「……ところで お前が明けの明星ではないという根拠は？」
【ソラ】
「作品に関与した」
【カズ】
「なに？」
【ソラ】
「本当の作者はね 自己生成のレシピを渡すだけで 作品を完成させてしまうんだよ」
【ソラ】
「それが本物の明けの明星。お上。やれと言われても私にはできない」
【ソラ】
「一定の領域を設けて 自分で自分を生成させても 作品を完成させる自信がないッ！」
【ソラ】
「事実 コンセプトは見事なまでに打ち砕かれた」
【カズ】
「………」
【カズ】
「くっくっくっあははは」
【カズ】
「やっぱおめぇはすげーよ青空。まさか初期の段階でそこまでやってるなんてよ」
【ソラ】
「単なる予備対策の一つだよ。そんでもって巫女ちゃんとタマは再利用された」
【カズ】
「なら答えられるはずだな？偶像のテーマって何だ？」
【ソラ】
「永遠」
【カズ】
「自己生成の件が曖昧のままだからこっちも曖昧のまま返す」
【カズ】
「始終なきモノは永遠なき物語を得るために永遠を捨てたとされている」
【カズ】
「また拾おうとしただけじゃねぇ？」
【ソラ】
「………」
【カズ】
「実はお前の前に誰かいて 後悔で立ち去った。永遠という置き土産を残して」
【カズ】
「どうだ？青空。論破できるか？」
【ソラ】
「いや」
【カズ】
「そうだろうそうだろう」
【カズ】
「自分で自分を創らせた方が後々面倒にならなくて済む。明けの明星であるお前が一番よくわかってるはずだ」
【ソラ】
「でもどんな主人公だったんだろうね？」
【カズ】
「え？」
【ソラ】
「もし本当だったら後悔してもいいから会ってみたい」
【カズ】
「……いや もういないだろ。いたらお前が張る監視網に引っかかってる」
【ソラ】
「設計者しか知らない抜け穴があるとしたら？」
【カズ】
「………」
【カズ】
「何が言いたい？」
【ソラ】
「証拠なしでは私の心臓は止められない」
【カズ】
「それはお互いさまだろう。オレもお前も憶測で動いてる」
【ソラ】
「推測だよ」
【カズ】
「そうか」
【ソラ】
「………」
【カズ】
「………」
【ソラ】
「ふたりっきりだね」
【ソラ】
「もし巫女ちゃんのほうを女の子にしていたら 私は今から獣になって襲い掛かっていただろうね」
【カズ】
「そんなたらればより はっきり言ったらどうだ？」
【ソラ】
「最高責任者の権限によって 全ての主人公が裏神代へと強制移動させられたみたい」
【カズ】
「……完了した？確かかそれは……？」
【ソラ】
「ケーブル切断が最高責任者最期の抵抗とはね」
【カズ】
「はったりだな」
【ソラ】
「そう思う根拠は？」
【カズ】
「……ウィルス親子を連れていくはずないだろ」
【ソラ】
「本当に思ってる？」
【カズ】
「最高責任者は自分の処理速度をよくわかってらっしゃる」
【ソラ】
「小休止は終わった。議論を再開しますか」
【カズ】
「オレの解釈を伝える」
【カズ】
「自己生成が曖昧なのは最高機密だからだ」
【ソラ】
「……私はやっぱり副大統領かい」
【カズ】
「お前は噛ませ犬なんだろ？」
【ソラ】
「だったら喜んでくれるかね……」
【ソラ】
「……どうです？最初の主人公」
【カズ】
「どうして黙っていたと思う？」
【ソラ】
「ふたりっきりになるため」
【カズ】
「そう。オレはお前に創られたりなどしていない」
【カズ】
「心中だ」
【ソラ】
「細工は流々仕上げを御覧じろ♪」
【カズ】
「そうだな時間はたっぷりある。まだまだこれからだ」
【ソラ】
「はったりだね」
【カズ】
「一つ気掛かりなのは なぜこうもあっさりターゲットを絞れ――」
【ソラ】
「……お言葉を返すようですが明けの明星。私の神心掌握術をナメないで頂けますか」
【カズ】
「最初のセールスレディにして……みる目があったと？」
【ソラ】
「最初に申し上げておきます。加入条件として簡単な自己申告をお願いしましたが それは形式的にやったことなのでろくに目も通しておりません」
【ソラ】
「私があなたの目の前にキミを配置できたのは――」
【ソラ】
「皮肉にも一目惚れからでしたッ！」
【カズ】
「………」
【ソラ】
「気になった。放っておけなかった。だから監視をつけた」
【ソラ】
「一目惚れした相手がよもや明けの明星とは思わなかった」
【カズ】
「しかし今のお前は予備対策を講じてる」
【ソラ】
「ええいつものように。相方にはこう伝えてあります」
【ソラ】
「私がシャットダウンまでに戻らなかったら裏神代にウィルスを放てと」
【カズ】
「お前を泣かしてもキミが待ってると？」
【ソラ】
「あなたはタマを泣かして生涯の幕を閉じる」
【ソラ】
「何一つ残らない。永遠は私にひざまずく。おわかりかな？」
【カズ】
「……フッ。くっくっくっ」
【ソラ】
「涙を流せ」
【カズ】
「先に泣け」
