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初恋の彼と、流星。

とりあえず、滑り込みで七夕中に連載スタート〜!

 もうすぐ夏が来る。

 思い出さずにはいられないことがある。


 もうすぐ七夕。

 願わずにはいられないことがある……







「ねぇねぇ、じゃあさ、次は……詩織の好きな人教えてよっ」


「えー恥ずかしいよぉー」


 小学5年の林間学校の夜、私は友達と恋の話で盛り上がった。

 私は恥ずかしくて、好きな人が誰かだなんて友達に言えなかったけど、話はそのまま宿泊先のペンションのうわさ話になった。


「あ、ねぇねぇ、知ってる? このペンションてね、毎年七夕には、宿泊客みんな浴衣になって、ペンションの裏にある笹林(ささばやし)に笹飾りをして、七夕祭りをするんだって」


「わーすごいね、それ! ステキ!」


「でねでね、この、空に近い山の頂上で、そうやってみんなでお祝いをするから、夜空にいる織姫様と彦星様も、みんなの願いを叶えてくれるんだって」


「うわぁーロマンチックー」




 当時の私は、その友達の話に夢中で聞き入った。だからこのペンションは、両思いのご利益があるとか、別れた人と再会出来るとか、たくさんのジンクスを聞いた。


 盛り上がった会話のあと、すっかり部屋にはみんなの寝息が響き渡る。けれどなんとなく目が覚めて眠れなくなった私は、夜空を見上げたくなってペンションのデッキに向かった。本当は、夜間は部屋の外に出ることを禁止されてたけど、林間学校の開放感で、そんなのすっかり、忘れてた。



 そーっと、しずかにデッキに続く扉を開く。すると、そこにはすでにひとりの先客が来ていて、木のベンチに座りながら夜空を見上げていた。


「……あ」


 思わず漏れた私の声に、その先客が驚いたように振り向いた。


「あ、れぇ? 笹原(ささはら)?」


 外灯に照らされる彼の顔とその声に、ドキリと私の胸が跳ねた。


……振り向いたその人は……私の好きな人だったから。


「あ……えと、なんとなく、眠れなくて」


 小さな声で答えた私に、彼は


「ふーん。そーなんだ? 知ってる? 夜中の室外への外出は、禁止されてるんだぞ」


 そんなことを言う。


「えっ。あ、ごっごめんなさいっ」


 思わず反射的に謝る私に、


「なーんてなっ。俺だって同罪。星が、キレイだなーって、眺めてたんだ」


 そう言って、笑った。


「あはは。そっか。私も……星が見たいなぁって思って来たんだ」


「そっか。隣……座る?」


 彼は、ベンチの端によって、空いたスペースの汚れを払ってくれた。


 隣に座るなんて照れ臭かったけど、彼のその行為に、「あ、ありがと……」反射的に、彼の隣に座った。


 ベンチに座って星空を見上げる。頂上に近い山の真夜中なだけあって、つかめそうなほど大きく光る星々。その瞬く星々が一面に散りばめられた星空は、すごくすごく……キレイだった。


「うわぁーキレイ……」


 思わずそう漏らす私の声に、彼も声はなく微笑んだ。


 しばらく無言のまま星空に見惚れる。星空は、普段見慣れているそれの何倍もキレイで、私の心臓も、普段の何倍も速くって、だけど彼の隣にいることは……すごく、落ち着くような、不思議な感覚。


 このまま、ふたりが座るベンチがふわっと浮いて、そのまま星空に吸い込まれてしまいそうな、そんな感覚になった。その時。



「あ!」


 流れ星が瞬いた。


「ねぇ! 今の、見た!? 流星(ながれぼし)だったよねっ」


 思わず声を弾ませそういう私の顔を、彼はまっすぐ見つめて微笑んだ。


「うん。笹原来る前から、何回か見てる」


 あんまりにもまっすぐな瞳で微笑むから、少し……照れた。


「あ……そ、そうなんだっ。なにか願い事……した?」


 俯きがちにそう言う私に、彼は答えた。


「うん。した。願い事。そしたら、叶った」


「え? もう叶ったの?」


「うん。好きなやつと……一緒にこの星空を見られたらいいなぁって。そしたら、笹原が来た」


「え……!?」


 それってどういう……そう聞こうとした時、彼がパーカーのポケットから何かを取り出しながら話し始めた。


「あのさぁ……笹原。お前……こないだ誕生日だっただろ? これ、売店で見つけたんだ。可愛かったから、やる」


「え?」


 小さなお土産袋に入ったそれ。ずっとポケットに入れてたのか、袋は少し、くたびれていた。


「あ……迷惑だったら、捨ててくれていいからっ」


 彼が、伏目がちにそう言った時、ぴゅうっと風が通り過ぎた。初夏とはいえ、山中の真夜中はやっぱり肌寒い。私が思わず身をすくめた時、彼は自分のパーカーに一瞬手をかけてから、その手を降ろして、


「あ……風が出てきたな。そろそろ中に……入ろっか」


 そういうから、


「あ、うん……」


 私もそう答えて、ペンションの中に戻った。





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