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疾風迅雷  作者: 抹茶犬
本編
6/11

帰り道

家までの帰り道、速水と印のことについて話し込みながら歩いていた。


女子と帰るなんていう典型的な青春の状況を体験出来ている俺は幸せ者に違いない。


だがこの女子、なかなかの毒舌で話をしていると痛い思いをすることがほとんどだ。


俺はおっとりした子が好きなのに。


「本当に、風宮君って何も知らないんだね。お父さんのせいだ、なんて言い訳しないでよ。知らないなら自分から知ろうとするのが人間ってもんでしょ」


という変な理屈を俺に突き刺した。


俺は何も言い返せなかったので、少し話をずらして逃げようとした。


「印って何なんだろうな……何で存在してるんだ?」


俺が独り言のように呟いたその言葉を速水が捕まえたようで、すぐに答えが来た。


「昔は、風宮家が率先して印の力を使ってこの世界の秩序を守ってたらしいけど。私の家系もそれに同意して一緒に活動してらしいよ」


速水は印について――そして、俺達印が使える家系について随分調べているようだった。


なぜ調べているのかは分からない。


俺には調べる必要も無かった。


なにせ、俺は親父との訓練以外で印を使う機会がなかったし、世界の秩序を守るだとか言われても実感が湧かなかったからだ。


実感が湧かないどころか、半ばその話を馬鹿にすらしていた。


「じゃあ、あとの――えっと、『雷丸家』と『火墨家』は?」


俺がそう聞いた時、ついに俺の家が見えた。


あと何歩か進めばもう家に帰ることが出来るのだが、速水の返答を待つために足を止めた。


「雷丸家も渋々協力してたみたいだけど、基本的に自分の家系を守るためだけに力をつかってたみたい。火墨家については――ごめん、まだよく分かってない。でも1つだけ言える、火墨家の人間には近づかない方が良いよ」


彼女は最後の言葉に特に力を入れて、さらに俺の方へ顔をグイッと近づけた。


彼女なりの警告の仕方だったのだろう。


実際俺は彼女の言葉を警告と受け取ったし、微妙な恐怖感も持った。


火墨家の人間には近づかない方が良いよ――そう言われたって、近づこうにも近づけないだろ。


だいたい、速水だって今まで近くにいたのに気付かなかったんだから。


誰が印を持ってるか、とか誰がどこの家系だ、とか分かるはずが――


いや、待てよ。名字が『火墨』なら火墨家ということか。


雷丸家にしろ火墨家にしろ、こんな目立つ名字は学校にはいなかったはずだ。


だとすれば、今の俺の日常生活では特に気をつけることはなさそうだ。


速水の忠告を半分流すように聞いて、俺は速水と分かれて家に帰った。


家に入るとすぐに親父の訓練が始まるか、と思い身構えたものの、家はシンとしていて何も起こらなかった。


不審に思って、親父を1度呼んでみた。


廊下の奥から親父がのそのそと歩いて出てくると、一言。


「女の子に自分の家まで付いて来てもらって、送りもしないとはなんと情けない!!無念……このような息子に育ったこと実に無念だ!」


そう言うと、すぐにまた廊下の奥に消えようと背を向けた。


見てたのかよ。まったく、古風な親父で困るよ。


「付いて来たんだよ、あっちが勝手に!送るったってあいつの家はかなり遠いし、仕方ねぇだろ」


反論はしてみたものの、親父は背をむけたまま奥へ消えた。





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