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疾風迅雷  作者: 抹茶犬
本編
4/11

日々の訓練


「今日カラオケ行く?」


数少ない友人の1人、浅野圭太が帰りの支度時に俺に声をかけた。


圭太は掃除用の箒を手に持っている。


そしてその後ろには、圭太の友人であり俺の友人でもある川瀬実が立っていた。


金曜日は、学生は近くのカラオケボックスヘと足を運ぶのが当たり前のことのようになっていた。


しかし今日は帰らなくてはならない。


「悪い。今日はちょっと用事があって……」


バツの悪そうな顔を圭太と実に見せると、2人ともあっさりと引き下がった。


俺は度々こうやって誘いを断ることがあるからだ。


本当に申し訳ないと思ってるし、俺だって本当は遊びたい。


盛り上がる学生達の間をそそくさとすり抜け、家へまっすぐ帰る。


これが俺の日常であり、この生活からは逃げることができないのだ――。


家に帰って玄関のドアを開けると「リリリリリ……!」という火災報知機のような警報音が鳴った。


そして俺の足元からフッと床が抜けた。


「ぅわっ……」


あまりに突然のことで俺は抵抗できずそのまま下へ落下する。


暗い所に落とされた俺は、すぐに体勢を起こし、辺りを見渡す。


暗闇でよく見えないが……目をつぶれば、分かる!気配を感じ取れ――


俺のすぐ後ろで気配がし、それを感じた瞬間に俺の首元に槍が飛んできた。


俺はすぐ右横に体を動かし後ろを振り返る。


だんだんと目も慣れてきて、俺の目の前で槍を握る親父の姿が見えてきた。


親父はすかさず槍を振り下ろす。


俺は首元からぶら下げていたお札を取り出し、パン!と両手を合わせて目を瞑る。


「風宮伝承の印、疾風迅雷!!」


俺はまるで漫画の主人公が発するキメ技の台詞のように叫ぶ。


すると親父めがけて竜巻のような風が3メートルほど巻き上がった。


それに呑まれるように親父は竜巻の中へ消えて行く。親父の槍が俺の足元に落ちた。


俺が口元を緩めほころんでいたのもつかの間、親父はあぐらをかいた状態で宙に浮いていた。


おれの竜巻はとっくに消えていた。


「風挙雲揺か……浮けるなんてずりーだろ」


親父の持つ印は「風挙雲揺」。これは自在に飛んだり浮いたりすることを可能にする印だ。


ちなみに、俺がさっき使った「疾風迅雷」の印は風と雷の合わせ印と言った所で、風や雷を出すことが出来る。


なかなかに格好良い技が出せたりもするらしいし、とにかく名前が格好良いのでその点は気に入っている。


親父が、


「まだまだだ!お前の竜巻は一向に成長しない。何故だ?何故5年間も訓練し続けたのにお前はそんなに弱いのか」


と首をかしげながら言うと親父は右手を上げた。


その右手にはしっかりと印を持っている。


あ、と息を飲んだ瞬間、俺は親父が出した風に呑みこまれ、気を失っていた。


親父は2つ印を所持している。


さっき親父が俺を気絶させたのに使ったのは「秋風烈烈」という印で冷たい風を出すことが可能だ。


印は、普通の人間ならどんなに修行しても3つまでしか持てない。


というのだが、印を6つ所持していて、さらに使いこなせる超人がいるという伝説を親父から聞いたことがある。


俺なんかはまだ1枚しか使いこなせないし、それにさっきの小さい竜巻しか起こせないんだ。


そういうわけで、俺は家に帰る度にこうやって戦いを強いられる。


親父は家で待ち構え、家の所々に仕掛けを作っては俺を叩きのめそうと必死なのだ。


だから俺はこの家が嫌いだ――。



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