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疾風迅雷  作者: 抹茶犬
本編
3/11

「印」


親父とは、小さい頃はまともに話したことが無かった。


母親は俺を大事に育ててくれたように思うが、俺が小学6年生の時に死んでしまった。


事故死だったと聞いている。


母親が死んで葬儀が終わった次の日に、親父と初めてあんなに長い話をした。


それは小学生の俺には衝撃的で、さらに理解できない物だったので、親父は変な人なんだと確信しただけだった。


その時に親父に渡されたのが――


「印」だった。


神社なんかに売ってそうなお札のような物で、中央に「疾風迅雷 印」と筆で書かれた文字があり、バックには朱印が押されていた。


どこかで見たような朱印だと思えば、俺の家の仏壇にあった「家紋」とやらとそっくりだということに気付いた。


「何?これ……」


小学生がこんな渋い物をもらった所で喜ぶはずがない。


俺は困ったように親父に尋ねると、親父は目を閉じて腕を組む格好で一度だけ頷いた。


親父は、世間一般でいう「強面」という顔面で、一見犯罪者かテロリストか、もしくはどこかの危ない組の一員かと思われるような、いかつい顔をしている。


ゴツゴツした彫の深い顔に顎鬚を生やして、薄くなった頭を隠すため刈り上げているものだから恐くならないはずがない。


とにかく俺は親父に怒られることに怯えて怯えて、とても真面目で良い子に育ったと自負している。


「ツグル。それは『印』と呼ばれる物だ。いいか、お前はこれから、それを肌身離さず持っていなさい。今お前に全てを説明するのは得策とは言えない。お前が高校生になったら話そうと思っていたが、母親が死んだ今、お前には力が必要だ」


親父は普段話さないような人だったので、これだけ長い文章を言えたのかという驚きがあった。


そして、俺は親父に「印」のことを詳しく教えてもらった。


「印」とは、俺の家系に代々受け継がれてきたお札のことだ。


それを使えば、俺の持つ超能力を引き出すことが可能で、さらにそれを強化できる。


「印」は1人ずつ違った物で、またそれに伴う能力も1人ずつ違いがある。


何のために、そしてどんな原理で「印」が生み出されたのか分からない。


この家系に生まれた異常、一生「印」を背負わなくてはならない。


「疾風迅雷」と書かれた俺のお札の能力は、意外と強力な物のようで先代の祖父が使っていたそうだ。


俺たちの家系がこの能力を使い続けたのは、単に個人の力が強くなるという自己中心的な考えではなく、この世界の秩序を守るために使い続つづけた、とのことだ。


要は世界中で異変が起きる時、もしくは時代の流れがあるべき方向へと向かなくなった時に、俺達の先祖は動いてきた。


しかし「印」のことは裏社会の情報であり、誰もそれを漏らしてはいけない。


それを使えるのは特別な人間のみ。それが、俺たちの家系だというのだ。


そして他にもこれを使える家系が数個あるというのだ――。


そんな話、小学生にしたって意味がないだろう?笑っちゃうよな。


でもそれから親父の訓練は始まった。


俺が「印」を使いこなすまで、叩き込む!と言われ、俺は泣いたよ。


ああ、普通に生きたかったなぁ。




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