十四 楓とテスラの研究
楓も使える超高性能量子テレパシーはガルマイン帝国の人間ならば誰でも使えた。ガルマイン帝国では生まれたら直ぐに脳に装置が埋め込まれるのだ。セラフィア国の未完成のテレパシー装置と違って、一度に何人もが参加して話すことが出来るし、何よりも音質が安定していた。
楓とテスラはそんなガルマイン帝国製のテレパシー装置を使って、研究を始めた。と言っても、研究は主にテスラが行ない、楓はテスラから研究の進捗状況の報告を受けるのみだった。楓はひたすらタイムマシンの完成を待つのみだったのだ。物理の研究は楓には高度すぎた。
ある日楓にスパイとして顔を整形するという話が、ファインマンからあった。ファインマンの管轄下にあった楓の完全コピーの研究が終わりを告げ、同時に楓の身の振り方が決まったのだ。そしてこれもファインマンの管轄下にあった装置Qも一台完成した様だった。
そんな時、楓とテスラの研究もついに成果が現れた・・・タイムマシンが完成したのだ。完成したタイムマシンの大きさは手のひら程であった。完成したタイムマシンには日時を表示するバックライト付き液晶とダイヤルが一つ付いていた。使い方は至って単純で、行きたい日時を例えば2025-07-12T14:32:08の様な形式で、ダイヤルを回し設定するだけだった。ダイヤルを回すとタイムマシンを中心として半径三メートル以内にあるものが全てタイムスリップするとテスラは言った。
宇宙軍軍事顧問の江田大将と連絡を取れないかと考えた楓は、着ているバトルスーツ内臓のテレパシー装置か音声通話機能のどちらかが使えるかどうか、試してみた。バトルスーツを着ていない猫の江田大将と連絡がとれるかどうか。テレパシー装置は試したが使えなかった。しかし音声通話機能は、ちゃんと使えた。江田大将は音声通話が可能な状態なのだ。
「誰だ?」江田大将と繋がった。
「もしもし東雲楓です。江田さん?」楓は、パパ活をしていた頃のように江田に話しかけてみた。
「そうだ、江田だ」
「今お時間頂けますか?」
「なんだ?」
「昔に帰りたくない?タイムマシンを作ったのよ」
「ちょっと待て。ヘルメットをちゃんとかぶるから」江田大将は宇宙軍から支給されたヘルメットをかぶり直してそう言った。
「まじか?でも、楓ちゃんは今、ガルマイン帝国にいるんだろう?」
「整形手術を受ける前に、ここから逃げ出すつもりよ、ヴァルグラントに乗って」楓は小声でささやくようにそう言った。
「整形手術?」
「そう、ガルマイン帝国のスパイにさせられちゃうところなの。時間が無いわ」
楓は焦っていた。
つづく




