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一 衝突

第一章 

一 衝突

 高校からの帰宅途中、楓のスマホが突然震えだした。

 「もしもし、東雲楓さんですか?」スマホの画面には福尾と表示されていた。

 「福尾さん?」

 「いきなりだけど今度いつ会える?」

 「ふふ、本当に福尾さんって何時もそんな感じですよね。で、そうですね、今週の土曜日の夕方5時はいかがですか?」楓はバッグから取り出した小さいスケジュール表を見ながら言った。

 「あ、空いてる。じゃぁ土曜の夕方五時に何時ものところで待ってる」福尾はそう言うと直ぐに電話を切った。


 土曜日の午後五時。犬の銅像の前。約束通り福尾が現れた。「やぁ」そう福尾が言うと、「何時もどうもお世話になっています」と楓は応えた。二人はとりあえず近くの喫茶店に入って行った。二人ともブレンドコーヒーを頼んだ。コーヒーを飲み終えてから楓がこう言った。

 「あのね、福尾さん、うちの猫のブラックが行方不明なの。探してもらえないかしら」

 「それはペット専門の探偵に頼むといいよ、刑事の僕が探すのは人間が専門なものでね」福尾は、警察内部でも一目置かれる存在だ。楓の客は有名人や要職につく人物が多い。

 「そっかぁ、やっぱりそうですよねぇ。ところで福尾さんって独身でしたっけ?お嫁さんはいないの?」

 「君が嫁のかわりだよ。ところで今日は映画でも見ないか?」

 「いいけど、何が見たいの?」

 「東京JK活動報告」それは最近流行の映画の題だった。

 「あ、あれね、いいわよ。その前においしいものでもサクッと食べましょうよ」

 「じゃぁOKなんだね?」

  二人は喫茶店を出ると福尾の行きつけの寿司屋に向かった。そして、寿司屋を出ると二人は映画館へと向かった。映画は長尺で、三時間。この場合、コーヒー代、寿司代、映画のチケット代以外に楓は三万円貰うことになる。

 映画が終わり、楓は福尾から料金三万円を貰うと、「ありがとね」と一言言って人がごった返す街の中へ溶けて行くように消えていった。すると直ぐに誰かから楓に電話が入った。スマホを見ると常連の一人、江田だと分かった。

 「もしもし東雲楓です。江田さん?」

 「・・・そうだ江田だ、楓ちゃん、今度の日曜日午前中空いてるかい?」

 「ああ、江田さん。大丈夫よ、空いてるわ」楓はスケジュールを確認して言った。

 「そうか、じゃぁ何時ものとこで会おう」そういうと江田は電話を切った。江田は本物の総理大臣だ。


 何時もの犬の銅像の前で楓は江田を待った。そして時間が来ると江田が来てこう言った。

 「やぁ、楓ちゃん」

 「あ、江田さん?何時も通り時間は正確ね、あと、今日の変装はいかしてるわ、そこいらへんにいるお爺さんって感じね。あ、大変!あの飛行機みて!こっちに飛んでくるわ。江田さん早く!急いで逃げなきゃ!」

 空には黒煙をまとったセスナ機が見えた。やがて、セスナ機は爆音と共に覆いかぶさるように逃げ遅れた二人に衝突した。

                       つづく   

            

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