表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初恋と杖  作者: 金子奈央
5/5

第五章

 都内某所。音楽スタジオ。リハーサル前。

「おい!タイジ!さすがに遅ぇよ!」ユーキがタイジに向かって吠える。

「えー、各々で練習してたんじゃないの~?別に俺が居なくても大丈夫でしょ」

「お前がいないと、リハが進めらんねぇだよ」

ユーキが、タイジの胸ぐらを掴む。

「そんな、手荒なマネすんなって。ごめん、ごめん」ユーキの言葉が届いていないのか、タイジはいつも通り戯けて言う。

「ふたりとも辞めてくださいよ。1回冷静になりましょ、ユーキさん。・・・・・・タイジさんは遊びすぎ!」

トモヒサが仲介役になって必死にふたりを止める。

「この間マッチした、障害者の女の子!ほら、足悪いって言ってた子、2回目でさ!リハの前はテンション上げたいじゃん?」

「もう、手出したんですか・・・・・・?その女の子にはなんて言ってるですか?」

「〈一応〉付き合ってることにはなってるけど、俺はいろんな女の子たちと遊びたいからさぁ」

タイジは指を使って数える。「いまはその子も含めて・・・・・・。数えるの、めんど。まぁ、リハはちゃんとやるからさー。許してよ」

ユーキは怒りを抑えながら、「・・・・・・ちゃんとやれよ」ぐっと力の入ったユーキの拳は震えていた。


 汀子は、ずっとスマホを握りしめている。LINEの通知音は鳴らない。

【タイジさん、今何してますか?】LINEのメッセージ欄に打ち込んで、消す。また打ち込んで、消す。

夜になっても、タイジからの連絡は無かった。

「お仕事、忙しいのかなぁ。リハーサルあるって言ってたし」

基本、装具を着けるのは、外出するときで、家では装具を使っていない。

つま先からふくらはぎにかけて、装具の重みで、軽くしびれが起きている。

「あ・・・・・・。帰ってから、装具着けっぱなしだった」

マジックテープを剥がしていく。ビリビリと音が鳴る。

筋緊張で凝り固まる両足は、ふくらはぎに痛みを生じさせる。

足のしびれに気が付かないほど、汀子はタイジからの連絡を待ち続けていた。

ベッドに腰掛けている姿勢がつらくなってきたので、体制を変え、ベッドへ寝転がる。

【お仕事、無事に終わりましたか?】そう打ち込んで、送信してみた。

すぐに〈既読〉はつかなかった。

タイジさん、何してるんだろう。これが、恋人同士ということなのか。

今日、経験したことが、全身を巡り、フラッシュバックする。

幸せだった。たくさん「好き」と言ってくれた。今まさにタイジが隣に居るかのように、鮮明に思い出せる。汀子は、その言葉は嘘ではないと信じている。

本当は、もっと一緒に居たい。しかし、それは叶わない。

タイジが「共犯者」と言った意味がなんとなく解ってきた気がする。演者とファンが交際している、なんて周囲にばれてしまったら、タイジは、バンドを続けられなくなる。

「それは嫌だ」と思う気持ちと「関係を続けたい」という気持ちが交差する。

「タイジさん、私のこと、好き・・・・・・?」汀子の心は震えていた。涙が頬を伝った。

「また、会えたらいいな・・・・・・。」

 やりきれない気持ちのまま、汀子は目を閉じた。


【お仕事、無事に終わりましたか?】

タイジは、汀子の返信に気づいていた。しかし、返信を打つのが面倒で、後回しにしていた。

 今日はリハーサルと、レコーディングというハードスケジュールだった。

リテイクを繰り返し、タイジは疲れ切っていた。

「返信考えるの、だる」

・・・・・・会っても、あと1回かな。やっぱり、めんどくさいわ。顔は悪くないし、言うことは何でも聞いてくれるんだけど。

あ、あの巨乳の子から返信来てる。最近、良いカンジなんだよな。ワンチャンいけそうかも。

【明日、会おうよ。なんせ売れてないバンドマンだから暇だし(笑)】と返信を打ち込むと、巨乳の子から早速、返信が。タイジの鼻の下は完全に伸びきっていた。

【えー、急すぎ!でも・・・・・・焼肉奢ってくれるならいいよ♡】

【え、まじ!?全然奢るよ~。楽しみにしとく!】

汀子から来たLINEに目を移す。

「・・・・・・後で返せばいいや」そうつぶやいて、タイジは眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ