第四章
※本章には、恋愛関係における身体的接触の描写が含まれます。
露骨な表現はありませんが、
登場人物の心理的負荷が大きい場面があります。
読後に不快感や戸惑いを覚える可能性もありますので、
ご自身の状態に合わせて、無理のない形でお読みください。
「共犯者」となったふたりは、2回目のデートに繰り出していた。
タイジは、フードを深く被ったままだった。初めて会った時と格好が変わらない。フードの隙間から覗く、ピンクブラウンの髪の毛がやけに浮いて見える。
タイジは、汀子の半歩先を歩いている。後ろも確認しない。汀子の歩くペースを無視しながら、歩いているタイジ。汀子は必死についていく。凸凹した路面に苦戦する。数ミリの段差でも足が引っかかれば、転んでしまう。
「汀子さ、足、まだ平気?」タイジは急にぐるりと汀子の方に、向き直る。
「へっ!?・・・・・・大丈夫ですよ?」嘘だ。本当は一刻も早くどこかの椅子に座りたい。
筋緊張で固まった両足を少しでも休めたかった。
タイジは、汀子の耳元でこう囁いた。
「〈休憩〉できるとこ、行かない?」
「〈休憩〉、ですか・・・・・・?いいですよ!」
ベンチがあったら嬉しいなぁ。できれば、座りたい。タイジさんのこと、もっと知りたいから、話もしてみたいし。汀子は、目線の先にベンチがないかどうか、確認する。
しかし、タイジは、汀子が「いいですよ」と言い切る前に、汀子のブラウスの袖をぐいっと引っ張る。
「ちょ・・・・・・タイジさん、どこに行こうとしてるんですか」半ば強引なタイジに、汀子は不安を覚えた。
「んー?〈楽しいコト〉ができる場所」
少なくとも、「ベンチで休憩」ではないことは確かだが、汀子はそれに気づかない。
タイジは、汀子の服の袖を掴んだまま、離さない。
裏路地に入ると、一気に閑散とする。人もかなり少ない。
タイジは、いちばん近くにあるラブホテルに目をやる。
「ここでいっか」
「え、ここって、」
「見れば判るじゃん、おいで」
タイジは、掴んでいた汀子の服の袖を、ぱっと離すと、汀子に向かって手を差し伸べた。
え、いきなり・・・・・・?私、セックスの経験なんて無いのに。怖い。けど・・・・・・。
汀子は、差し伸べられた手を握り返した。もう引き返せない。
汀子は直感でそう思った。
タイジに「おいで」と言われた瞬間、こみ上げてきたのは、不安だけではなかった。
ある種の高揚感が汀子の脳内を支配していた。
タイジが部屋のドアを開ける。
バタン、とドアを閉められた瞬間、タイジは汀子の唇を奪った。
いきなりのことに、汀子は驚いたが、身体の感覚がほろほろと崩れ落ちていく。
気持ちが、好い。
「俺のこと、好き?」
「・・・・・・はい」
汀子は、初めての経験を噛みしめるように、タイジに身を委ねていた。
甘い匂いが混ざり合う。撮影会で感じるいつもの匂い。
それが、ひとつになって溶け合った。
行為が終わると、タイジは、急いでいた。
「汀子、マジでごめん。これから、リハなんだよね。だから、今日はこれで解散ってことで。マジでごめん!」
「え、・・・・・・そうなんですね。」
え、これで「終わり」?恋人同士ってみんなそういうものなの?汀子には、解らなかった。




