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文文hello
ギンセカイは人工生命製造部長職の報酬として、それなりの可値を保有していたが、禁忌とされる改造器官を導入した異能を持つ個体を製造しようと考えていた。しかし、配偶者もいて、これまでの信頼をもつ彼は裏切ることができなかった。誠実で真っ白なため、周囲からの信頼も厚く、役員昇進も有望視されていた。しかし、製造ラインで原材料が混入したことにより、大量の人工生命が破棄。この時期は異常気象によって、虚弱な多数の生命が淘汰されたので、その対策に必要な可値をさきに浪費してしまった人工生命製造部へ責任が問われた。当時の責任者のギンセカイは異動を命じられたが、なんとそれを拒否した。産まれた数少ない人工生命の破棄を阻止するためであった。彼らの中には異常値の基準を超える可値を保有する種がいたのだ。そのため、役員会へかれらを有効活用する策を考案し提言したのだ。しかし、創始者かつ最高責任者の伊勢六幻はこれを否決し、結果として”該当ラインで製造されたすべての人工生命の破棄”を再び勧告した。
そして、彼の最後の仕事として廃棄を行うのだが、監視者を欺いて、彼らの可値を盗んだ。あらかじめ数字を改竄しており、高度で難解かつ曖昧の数字なため、監査を誤魔化せたのだ。
蓄えた可値をピカロという最大容量を持つ廃棄予定の人工生命へ与えた。ピカロはバラバラになった仲間に埋もれながら、出荷された。輸送機関に仕込んだ膨張弁の亀裂によって、事故が起きたとき、近隣の河に転がるように落ちたピカロはそのまま、指定の場所を目指した。
このころ、ギンセカイは別のポスト就任を提案されるがこれを断り退職した。このとき、すべての機密を忘れる処理を受けることになったが、秘密裏に匿った廃棄予定の人工生命の協力により、特定の記憶を復元できた。しかし、代償として彼は死んだ。記憶を取り戻したものの、他のスクラッパーと会えずにいた。そのとき、ピカロというスクラッパーに再会した。彼は高い可値を明らかに持て余していたので、それらを受け取った。少年時代のような全能感を覚えたギンセカイは深い記憶にあった生まれ育った雪国と泥で汚れた暗い地下室を思い出した。そして、望郷の念に可値が反応した。このとき、エーカンジは寒い季節であった。異常気象の影響もあり、とくに寒い期間であった。
白い雪が降り始めた。この地域で積雪は珍しい。発露する可値が収斂するまで積雪は続いた。そして、家に戻ると暗い地下部屋への階段ができていた。恐ろしさを感じながらも入ると泥と肥料にまみれた素朴な椅子と机のある長い空間であった。売却予定のものに変更を加えてしまい、狼狽したギンセカイにピカロは力を少し返してほしいといった。
伊勢六幻を失脚させることを企てたギンセカイは、異常な人工生命を流出させ、事件を起こしたという流れを企てる。ピカロに力を与えて、大量殺人をさせようと考えた。信頼をなくした壮年男性は人生の危機に狂っていた。実行する直前で奇妙な噂を聞いた。伊勢六幻が失踪したらしい。情報の波にも流れなかったものの、六幻の露出がなくなったのは確かであることがわかった。このとき、人工生命と並行して、転生業の準備と試験が進められていた。少なくなった人口で困難になるであろう教育や育成を補うために考案された。しかし、他所の人材を殺して奪う恐れが広がり、ほかの星で受け入れられるには時間を要した。
ギンセカイは六幻を追うために、新しく合流したスクラッパーのシンジに調査を依頼した。シンジは宗教に目を付けて、ギンセカイを神とした宗教団体を設立した。少しずつ増えた入信者のなかには配偶者が神経財団に属する者もいた。シンジは自身を神人と名乗るようになる。影響されたスクラッパーたちは神の元にいるとして、神人と名乗り始める。このとき、洗礼と称する麻薬成分を用いた自白作業を行い、六幻は転生したという証言が出てくる。
ギンセカイは秘密裏に進められた第一期の転生者を調査する。これは見つからずに終わる。しかし、六幻が前例のない転生に身を投じるとは思えなかった。そのために第一期転生者にはいないと割り切った。第二期転生については公開されていたため、容易に特定できた。神経財団へピカロを入れ込ませて、対象者の情報へマーキングを付ける。ここで全員を誘拐するも六幻の記憶を保持するものはいなかった。返すわけにもいかないため、天上区や五羅区、九済区の超富裕層を相手に売りつける。このとき、転生者の印として、眼球に黄金を注射する。ごく一部、霹靂区へ逃亡したものがいたが、しばらくすると死体で回収された。
このあたりで特異な力をもつ神人ピカロの噂が立ち始める。ピカロと並んで動くシンジやほかの神人まで、可値の獲得を期待され、神人狩りが始まる。因果応報で誘拐に関わる神人たちはここで死に絶えた。唯一の生き残りがシンジとなる。
第三期転生は同様に公開されたものの、前回の誘拐騒動を受けて、保護が手厚くなる。転生者は監視されていて、動けなくなる。情報の限りでは六幻の前世をもつものはいない。しかし、ひとりだけ無数の転生歴をもつ人物がいることが判明する。そして、彼の周囲には保護者らしきものが認知できないことがわかる。彼の情報を探るため、ピカロに情報管理課へ潜入させる。しかし、無限に連なる情報を前に解析不可という回答が返ってきた。装置の異常だと処理され、いつのまにか綺麗なデータが貼られていたようだ。
そのときにこいつが六幻だとわしは確信した。ピカロへ与えた地下室に閉じ込めてこいと命じる。そして、殺害に成功したと報告しやがる。自白の限りでは認めなかったらしい。わしはいずれにせよ肩の荷が下りた気分になった。この世にいないならそれで良し。六幻を殺せたなら尚更よしだ。
しかし、報告の翌朝にピカロが殺された。痕跡はあるものの遺体すらない。そして、その現場には伊勢階天成らしき人物の目撃情報があった。やつは生きている。シンジに調査を命じる。六幻であるという証拠を掴めぬまま、もはや招かれざる客と化した標的が訪れた。
衝撃と暴力の果てに疲弊した老人は、もはや殺意も失せかけていた。それでも目の前にいる小僧が伊勢六幻の転生体であるなら、やはり殺そうと決めていた。
「わからん。マザーコンピュータにアクセスする必要がある。権限を奪うには管理者キーを特定する必要がある。管理者はおそらく伊勢六幻と名は知らんが、情報管理に与する役員とあと誰かだろう」
「おれが六幻の転生体だとして、管理キーなんて知らん。とりあえず、神経財団にいってみる」
「おい小僧、いまから行くのか?!」
「待つ理由はないだろ」扉に手をかける。
扉を開けるとシュリンプとy9がいた。
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幻聴が聞こえる。頭が痛み始めた。
栄枯!栄枯!




