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第10話 一線ってどこ?

 今晩も晴ちゃんには私の部屋に来てもらってる。目的は勿論吸血だ。


 初めての行為から既に数度目、ようやく少し慣れが出てきた。

 また慣れと同時にいろんなことが分かり始めてきた。


「ここに座ればいいんですか?」

「うん」


 最近分かったことその一、連れ込む方が気分が上がる。


 床へ座る晴ちゃん、私はその横にしゃがみこむ。今回もしっかりと彼女を抱え上げ、ベッドへと運んでいく。私が彼女をベッドへ寝かせることは、もはや恒例となってた。


 わざわざこんなことをする理由は至極単純だ。


 私の手で運ぶと連れ込んだ気分になるからだ。無論同意の上だが、女の子を攫ってきたような、そんないけない気持ちになる。


 ベッドの上にメイド服のまま座らされる晴ちゃん。仕事着のままベッドの上にいることが落ち着かないのか、そわそわと身じろぎしている。


「……先に服は脱がなくていいんですか?」

「ううん、脱がせたい」


 最近分かったことその二、脱がせるのは非常によい。


「ただ手間なだけではないですか? ベッドに上がる時もそうですが、私がした方が早いのに……」

「初日にそのメイド服を脱がせていいって、はるちゃんが言ったんだよ」

「……言いましたっけ?」

「うん、言った」


 多分、恐らく、それらしい事を。


 はるちゃんの真正面に座って、膝の上に置かれた両手に、私の手を重ねる。


「ね? 私に任せて」


 彼女の手を、脱がせる際に支障にならないよう脇へ移動させると、手を後ろについて上体を支える姿勢になった。


 これで準備万端だ。

 メイド服のリボンは縦に5つ並んでる。まずは一番上からだ。


 リボン結びの端をつまんで、力を入れずに引っ張ってほどく。結び目が完全に消えた瞬間、きっちりと閉じられていたメイド服が少し緩んだ。心拍数が早くなってきたのを感じてる。


 リボンをほどいていくこの行為は、プレゼントの包装を解いてくあの気持ちに似ていた。待ちきれないけど、もどかしさもまた楽しい。


 実はこのメイド服、お母様の会社で作られてるものだ。


 お母様の会社はアパレル系の会社で、吸血人向けの商品も多数開発し扱ってる。このメイド服もその一環らしい。なんでもお母様が自らのために、自らデザインしたみたいだ。昔はデザインの意味が分かっていなかったけど、ようやく分かるようになった。素晴らしいと思う、尊敬が深まった。


 全てのリボンをほどき終え、ゆっくりと前を開く。この瞬間は何度経験しても慣れないかもしれない。緊張だろうか、体が硬く感じる。


 秘匿されたものを白日の下に晒すことに悦楽を感じるのは、きっと私だけじゃないはず。だから私が変なわけじゃない。


 上着が開かれると、いつも通りの黒い肌着と白い肩。だけど私が剥き出しにした肩だと思うと、なおさらに艶めかしく見えた。今すぐにでもかぶりつきたくなる魅力がある。


 最近分かったことその三、恥ずかしがる表情が堪らない。


 はるちゃんには言ったことないけど、リボンをほどいている時、それに上着を脱がせる時の表情がまた私の琴線に触れる。


 恥ずかしそうに赤くなった頬、眉根をちょっとだけ寄せた困り眉、それに細められじっとりとした目。


 「こんなの何がいいんですか」と言いたそうに嫌がった雰囲気をだしつつも、同時に「仕方ないですね」と許容する相反した気持ちも感じられる。


 兎にも角にも服といい表情といい、彼女の端然とした様を私が崩すのに、言い知れない喜びを感じてしまう。


 私はおかしいのかもしれない。素敵で大事な人を辱めたいと考えてしまってる。

 でももし本当に拒絶されてしまったら絶対に傷ついてしまう。

 

 私のすることに反応しつつも許して欲しいなんて、構って欲しくて悪戯する子供となんら変わらないことは分かってる。


  だけど、そんな私でも彼女は受け入れてくれるのだ。たいていの事は二言返事で許してくれる。

 そしてまた甘えてしまう。完全に負の連鎖が出来ていた。わかっていても自分からは抜け出せない。


 だからこそ彼女の中の最後のラインを見極めなければならない。本気で拒絶してる一線を越えてしまった時が、この関係の終わりになるだろう。


 そんなわけで私は現在、吸血のたびに色々と試してる。


「えいっ」


 私の顔を晴ちゃんのお腹へ押し付ける。お腹特有の柔らかさとじんわりとした温かさ、肌着のすべすべとした感覚が心地いい。手の置き場所を探るふりをして手でも感触を楽しむ。


 ここを私の枕にしたい。匂いも首筋より濃い気がする。


 ぐりぐりと自身の匂いをつけるように顔を擦りつけると、頭を抱きかかえて髪を撫でてくれる。自分の匂いと彼女の匂いしかしないここは、まるで独占しているようで気分がいい。


「またですか? 分かってると思いますが、そこは噛んではいけませんよ」


 以前にここから吸血することを提案してみたんだけど、珍しく断られてしまった。


 理由としては内臓に近い部分を噛まれることに抵抗があるらしい。たとえ牙なんかの長さでは届かないと理解してても怖さが勝つのだろう。


 これはきっとアウトのライン。

 考えなしに超えてしまうと本気で嫌われてしまう。そんなことになったら引き籠る自信がある。


 だから私はまるきり食い下がらず、素直に引き下がる。


「うん大丈夫、わかってるよ。……めくるのもダメ?」

「……肌着を、ですか?」

「うん。お腹、見たいな?」

「そんなことする必要ありますか?」


 真っ当な疑問が返ってきた。ただその言葉には嫌悪感は感じられない。まだ押してけるかも。


「あ、あるよ。……私の気持ちが、盛り上がる……から。吸血のためだから」

「そういうものですか?ではお腹ぐらいならいいですよ」


 ここ最近、肌着姿になることが増えたせいか抵抗感なく了承してくれた。


 晴ちゃんは割とちょろい。吸血のためだと言い張れば、こんな風に納得してくれる。


 後ろめたさも無いわけではないけど、まるきり嘘は言ってない。昂るし、そうなると吸血をしたくなってくるのも本当だ。……必須では、ないかも。

 

「じゃ、じゃあ失礼しまして」


 布の端を咥えて首の動きで、ゆっくりとおへその上までめくってく。


 日に当たってないことさら透明感のある白い肌、スラリとしたウェストライン、形のいい縦型のおへそ、脂肪が少ないからからかほんのりと腹筋の筋が見える。


「……またそんな、口で咥えるなんて」

「んーん、晴ちゃんお母様みたいなこと言ってる……」

「千鈴さんが思った以上に甘えんぼだったので、母性が出てきたのかもしれません」


 甘やかした晴ちゃんのせいでもあると言いそうになったけど、すんでのところで飲み込んだ。満更でない雰囲気に反論する必要はない。


 それよりも、せっかく剥いたお腹に注目した。

 やはりきれいな肌を見てると噛みつきたい欲求が出てくる。


 しかし約束を破る訳にはいかないのだから、ここは我慢することになるだろう。


 ……血を吸うのは許されていなくても、口をつけてはいけないと言われていないんじゃ?お腹を噛まれるのが怖いと言うなら、噛まなければいい。


 というわけでお腹を味わわせて頂くことにした。


「えぅ」

「……えっ!?  ちょ、ちょっと千鈴さん?」


 唇をつけ、舌を這わせるといつも以上に驚いた反応を見せてくれる。


「……らいじょうぶ、きゃまにゃいよ?」

「んぁ! だから、口をつけながら、話さないで下さい。く、くすぐったいです!」


 まだ大丈夫。これはまだ戸惑っているだけ。

 啄むように唇を落とすと、腹筋に力が入りビクッとお腹が震えた。


 お腹、弱いのかな。こんな簡単に大きな反応が見られる。


 吸いたい。ダメだけど、ここから吸いたい。発散されない欲求が積み重なってく。


 そろそろまずいと自覚していたけど、ついに我慢がきかなくなって暴挙にでてしまう。


「ちぅ」

「んっ……」


 唇をつけたまま強く吸う。歯を立ててはいけないとういう思いと、吸いたいと考える欲求の折衷案だった。


 すぐ我に返り、顔ごと離した。やってしまったかと恐る恐る晴ちゃんの顔を確認する。


 呆気にとられた顔。まだ怒りはないけど、実感が湧いてないだけかもしれない。


 晴ちゃんが手をお腹へ持っていって、吸われた箇所を触って確かめる。歯は立てていないから傷はついていない。


 すると途端にほっとした顔になる。次いで私を見据えた。


「……あなたまでどうして驚いているんですか。そんな悲愴な顔をしないで下さい。大丈夫、怒っていませんよ。ちゃんと約束は守られていますから」

「ほんと? ……調子に乗っちゃった、ごめんね」


 私の謝罪に対して腕を広げ、迎え入れるように抱きしめてくれる。


「ほら、もう気にしてませんから。それよりも、そろそろ遊ぶのは止めて吸血してしまいましょう」

「……うん」


 そのまま言われるがままに首へ噛みつき、眠くなるまで晴ちゃんを頂いた。その日の中で翌日以降も頭から離れない光景がある。


 吸い付いた後のお腹だ。


 赤い跡がしっかりと残っていたのだ。まるで私が触れたことを示すかのように。噛み傷はすぐに治ってしまう。しかしあの跡が、もし長く残るなら……


 また一つ悪いことを覚えてしまった。



 

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