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61/63

61話目

全63話です


今回に限り「あゆみと瞳美」は曜日に関係なく毎日2話ずつ、18:00と18:10に投稿します(例外あり)

※特に告知していなければ毎日投稿です

 それからはよく覚えてないんだ。多分、瞳美も同じだろうって思う。彼女はもっと残酷だ、自分のお腹にいるはずの子供がいなくなったんだから。


 部屋に入ると瞳美がちょうど目を覚ましかけていた、


「あゆみ……私、守れなかった……」


 瞳美は涙をこらえていた。あたしも泣かなかったよ。さっきのは弔いの涙。今は泣く時じゃあない。そう感じたんだ。本当を言えば、無事に出産してから泣きたかった。


 前に瞳美にそんな話をした事がある。その時は瞳美も[そうね、それがいいかも]って言ってくれて。でも流石に今日は泣いちゃったんだ。


「よく、頑張ったね、ありがとう」


 そんな言葉しか出てこなかった。思わず抱きしめたよ。しばらくしてお医者さんが来て、


「出来るだけ近いうちにかかりつけ医を受診してください」


 と言われたあとに、


「これが最後ではありませんよ」


 と言われたのは、もしかしたらあのお医者さんなりの声のかけ方だったのかもしれないなって。


 実際、その日のうちに退院となった。二人して車で帰るんだけど、車内で、


「あのお医者さんの言った通り、これが最後じゃあないわ」


 そう瞳美は言ったんだ。そして、


「私はその日が来るまで泣かない。今日の涙はあの子に送った涙。次に泣く時は」


 声が震えてる。


「うん、その時はいっぱい泣こう」


 そう言って帰ったんだ。


 後日、二人して休みを取ってかかりつけのお医者さんにかかったんだ。


 そこでお医者さんは、


「今回は残念でした。ですが、DNA検査の結果は問題なかったので次に期待しましょう」


 と言ったあとに、


「こんな事を医師の私が言うのは何ですが、いつまでも過去にとらわれずに気持ちを切り替えていってください。今回はご縁が無かった、そう思うようにして」


 そう言ってくれた。


 もしも気持ちが高ぶっていれば[何を!]ってなるんだろうけど、今のあたしたちなら現実を受け入れられるだろうって思ってくれたんだろうね。


 で、今後の話をされたよ。半年から一年は受精はしない方が良いと。身体を落ち着ける為らしい。それくらい妊娠っていうのは母体の体調が強く影響するんだって。


 あたしたちは、もちろん次を考えてる。そしたら、


「もしも、次でダメなようなら……子供は諦めてください」


 とも言われた。ショックだったよ。あたしがこれだけショックを受けたんだから瞳美はもっとだよ。


 現に病院を出てタクシーで駅まで向かっている最中に、


「ゴメン、あゆみ。震えが止まらないの、ちょっと抱きしめててくれる」


 そう言われたんだ。そりゃあそうだよ。母体だもん、しかも次がラストチャンスと来ればそりゃああたしだって震えがきそう。でもね、ここであたしも一緒になってただ震えてしまってはいけない、そう思ったんだ。だから震える代わりにギュッとしたんだ。


 次かある。でも次が最後。


 まだチャンスがあると捉えるべきなのか、もうあとがないと嘆くべきか。


 そんなのは決まってる。


全63話です



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