47話目
全63話予定です
今回に限り「あゆみと瞳美」は曜日に関係なく毎日2話ずつ、18:00と18:10に投稿します(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
「二人とも、良く考えたのね」
ようやくお母さんが声をかけてくる。
「あたしはそのつもりでいたよ。だから、その、アレから液体を取って凍結保存しようって思ってた。その時が来たら、ペアになる人との間に子供をもうけたいって。だから、性別は男のままが良いんだ」
自分が今まで悩んで、決めかねてた事が頭の中でパズルのピースが埋まっていくように組みあがっていく。
そう、あたしは戸籍は男性として、性は女性として生きていこうと思う。そして相手にはその事情を理解してくれる女性がいい。
それは、
「籍は男で実質は女のあたしを受け入れてくれる、瞳美、あなたと一緒になりたい。そしてあなたとの子供が欲しいの」
やっと言えたその言葉。それがどれだけ重いかは十分承知しているつもり。障害となる問題がどれだけ多いかも十分理解してるつもりでいる。いずれ生まれてくる子にもちゃんと説明が必要だろうし。
それでも、一緒になりたいんだよ。こんなあたしでも幸せが欲しいんだ。
お母さんは、泣いてた。あたしは、あたしたちは泣かなかったよ。二人とも震えてた。そりゃあまだ十七歳ですもの、こんな大きな決断をするのに涙一つ流さなかったのを褒めてあげたいくらいだよ。
瞳美にパートナーになって欲しいって決めたあの日から、そういう事で泣くのは止そうと思ったんだ。多分瞳美も同じ事を思ってると思う。それは前にも言ったけど、涙で流していい問題じゃあないから。一時の情で流していい問題じゃあないから。
それだけの覚悟が今の二人にはある。それを表わすには涙は要らないなって。
あ、そうだ。お金の問題を忘れてた。
「そう、お金。本当に良いの? あたしは百万円行くかくらいしか持ってないけど」
って言ったら瞳美はクスッと笑って、
「私は全部貯金していたから二百ちょっとあるわ。それ、私たちの資金にしましょう」
って言ってくれた。そうか、そんなに前から考えてくれてたんだね。ちょっと泣きそうになる。けど泣かないよ、その代わり笑顔でいよう。
お父さんの教えとはちょっと違う、笑顔。微笑みは盾になるかもしれないけど、笑顔は相手に言葉を介さず伝わる自分の意志なんだ、と思う。笑顔で怒ってる人なんて実際にはいない。もしいたとしてもそれは本当の笑顔じゃあない、ただの偽物の笑みだ。
だから瞳美には笑顔を見せるよ。今までも、これからも。
「もう一度聞くけど、二人ともそれでいのね」
お母さんがそう話してくる。二人の意志はもう固まってるんだ。
「うん、あたしはそれで行きたい」
その行きたいは[行きたい]なのか[生きたい]なのか。でもどちらにしても結果は同じ。前に進むだけだよ。
「すみません、今は口約束だけになってしまいますが、いずれ時期が来たらちゃんとした形でご挨拶させてもらいますから」
瞳美はあたしのお母さんにそう言ってた。
あたしもご両親にちゃんと挨拶しないとね。でも今は手術が先だ。
かくして方針が決まったのですよ。
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