45話目
全63話予定です
今回に限り「あゆみと瞳美」は曜日に関係なく毎日2話ずつ、18:00と18:10に投稿します(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
まさかとは思っていたけど、冷静になればそういう可能性が高い事くらい分かるはず。でもそれ以上に別の事に気を取られていて、正直この話のまで手が回ってなかった。
[どうしよう]
あたしがそう言ってる。ダメなものはダメ、となると残されるのは同性婚だ。でもそれって当初の望んだ形じゃあない。
グルグルと意味もなくさっきのお医者さんが言った[難しいですね]の言葉が頭を回り続ける。本当にどうしようか。
だが、そんな時に、
「先生、仮にですが、自費手術という形をとれば如何でしょうか? 凍結保存も自費でとすれば自由診療になるはずですから申請の必要は出て来なくなるのではないでしょうか?」
そう言ったのは瞳美だ。
「え、自費?」
当然、そんな言葉が口を衝く。だが、瞳美はまっすぐにお医者さんを見ていた。
お医者さんはしばらく黙ったあとに内線電話でどこかしらに電話をかけて[性転換、そう、その患者さん。自費の場合は、うん、うん、そうか、分かった、ありがとう]と電話を切ってから、
「自費なら出来なくはないそうです。手術の名目はあくまで先天疾患の治療。だけどその治療費を全額負担という形をとれば役所への申請は義務ではない、と。このご時世ですからね、少しだけ昔より規制が緩くなっているんですよ」
と話してくれた。
自費かぁ、そこまでのお金ないぞ。
そんなあたしに、
「現在、性別適合手術は健康保険の適用外なんです。性同一性障害者への治療はすべて自費診療で行われています。ここでもしも性を変えなければ、あなたは性同一性障害患者さんと同等の扱いになります」
と付け加えた。
「ち、ちなみにお値段は?」
とお母さんが聞くと、
「性器の除去術が大体二百万円から、というくらいですね。精子の凍結の方は年間三万ちょっとというところです」
との回答が。
「それは、今日出さないといけない回答ですか?」
とあたしが聞くと、
「手術の日程の調整があります。本来であればもう少し前に摘出手術を行わないといけないのを十八歳という年齢まで待ったのです。これ以上の先延ばしは出来ません」
と言ってから、
「そうは言っても話し合いが必要だと思います。私は明日、出勤予定でいます。本来であれば受付を通す必要があるんですが、事情を考慮して明日まで待ちましょう。明日の十二時にまたこの診察室まで来てもらえますが? そこがリミットだと考えてください」
そう、本当に患者思いの先生なのですよ。
その厚意に[すみませんがご厚意に感謝します]と言って今日の診察は終えたんだ。
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