44話目
全63話予定です
今回に限り「あゆみと瞳美」は曜日に関係なく毎日2話ずつ、18:00と18:10に投稿します(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
その日はあっという間に訪れた。朝もまだ六時過ぎだって言うのにもう三人とも準備が出来てて。お父さんは、残念ながら今回は欠席。仕事だって。まぁ、当所の目的通り三人で、っていうのがそのまま通った形になったんだ。三人とも女性だ、というのもある。だから、お父さんがいると話しにくい事も話せるかなって。あれ、もしかしてお父さん、気を遣ったの? ちょっと邪推するくらいタイミングが良いんだもん。
タクシーを呼んで最寄りの駅へ行き、ローカル線に乗ってこの県の主要ターミナル駅まで行く。そこから乗り換えで新幹線に乗って隣の県まで行く。
本当を言えば来たくはないよ、だってあんな事件があった土地だもの。昔は男として扱われてたんだし。でも、まさか病院を呼ぶわけにもいかなければ、お医者さんに来てもらう訳にもいかない。患者さんをたくさん抱えてる病院だし。
駅からはやっぱりタクシーで病院へと向かう。受付を済ませてしばし待合で待つ。するとアナウンスがあって診察室前まで来るように言われる。
そうそう、ここのシステムって[何々さん、診察室前までお越しください]っていうアナウンスじゃあないんだ。中央待合には電光掲示板が設置されててそこに番号が表示される。そのあと下にテロップが流れて何番診察室までって表示される。まるで市役所みたいって最初は思ったよ。まぁ、実際それくらい大きな病院だからね、そうでもしないと捌けないんだろうなって思う。
診察室前の待合椅子に三人で座った時はちょっと緊張し始めてた。少し震えてたんだ。そうしたら瞳美が手を握ってくれた。そんな一コマがあたしには嬉しいんだ。言葉は要らない、ただ傍にいて手を握ってくれる、それだけで嬉しいんだ。
「三〇六番のかた、どうぞ」
という人工音声に促されるように、
「失礼します」
と診察室に入る。そこにはいつもの見慣れだ先生が座っていた。
「経過は順調そうですね」
そう、このお医者さんは丁寧語で話してくれる。こう言っちゃうとちょっと語弊がありそうだけど、あたしが近くの内科にかかった時なんかは[どうしたの?][じゃあ、薬出しとくから]ですよ。医療にサービス業を求めるのはお門違いなのは分かってる。分かってるけど、やっぱり一個人として丁寧語で話してほしいな、と現在サービス業で働いている自分としては思うのです。
それちゃったけど、
「はい、体調に変化はありません」
と返して、問診、触診、あらかじめ取っていたMRIを見せられて、
「経過は順調です。女性としての性がちゃんと強く出ていますね。このまま行けば手術が可能でしょう。そこで今後の日程ですが」
と来たから、
「先生にお話がありまして」
そう言って事の顛末を話したんだ。女性化しても籍は男性のままに出来ないか、あと、例の液体を凍結保存できないかって。
そうしたら、
「出来るか? と言われれば出来なくはないです。ですが、この手術は性転換手術の一種になります。保険適応はされますがその場合性転換の申請が必須になります。つまり、戸籍上も女性にならなければならないんです」
えっ、って事は、
「籍は男性のままっていうのは」
の質問に、
「難しいですね」
との回答が。
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