3話目
全63話予定です
今回に限り「あゆみと瞳美」は曜日に関係なく毎日2話ずつ、18:00と18:10に投稿します(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
あたしを襲ったある事件。それは何気ない日常の一幕がきっかけだった。
いつものように女子数人と話をしてて、ちょうど話も終わって別れたところで同じ学校の男子に襲われたんだ。そんなお年頃だからなのかもしれない、押し倒されて、その、ね。
その時に[アレ]が付いてるのがバレたんだ。
そこからは瞬く間だったよ。あたしの事は男が女をしてるって言われて。当然次の日は休んだし、そこからは学校にも行けなくなって。
今思えば、あたし被害者だよね? 何であたしがそんな目に遭わないといけないの? とは思ったけど、起きてしまった事は仕方がない。
早速、家庭会議が執り行われたのですよ。
出席者は父、母、あたしとむぎ。まぁ、むぎはあたしにくっついてたから別として、お父さんとお母さんの考えは[お前が好きにすればいい]だった。
そう思って今までを振り返れば、確かにあたしの性を尊重してくれてた。実家のおじいちゃん、おばあちゃんと敢えて仲が悪くなっても[お前の好きにしたらいいよ]と言ってくれてたんだ。
お父さんもお母さんもあたしの性を隠せるほどの思考の持ち主な訳だから、当然バレてしまったその先の未来図も予測が出来ただろうし、出来たからこそ庇ってくれたんだろうね。
「引っ越しをしよう」
お父さんから出たひと言目はそれだった。当然、お母さんは、
「そうは言っても貴方、仕事は?」
と来る。だけど、流石は父と呼ぶべき存在というべきなのか、
「あてはある」
と言い出す始末。それをよくよく聞いてみれば県外に転勤の募集があったらしい。もうここまでくると自分の性を呪えばいいのか、父親の幸運を拝めばよいのやら。
それからの話は早かった。お母さんは何度か学校へ行き、事情を話してくれて学校側も[致し方ない]という意見でまとまった。
だけど、一発くらいは殴ってやりたいのが心情、それはお父さんの役目だった。流石に殴りこそしなかったものの、相手側から謝罪の言葉を引き出した。金銭までは流石に無かった……と信じたいが、家に帰って来た時のあの満面の笑みを想像すると、もしかしたら何某かのやり取りがあったのかも知れない。
現状が解決したなら、次は向かう先だ。転勤先の学校にはまた説明をしたのだが、今度は、
「そのお子さんを一度連れて来ていただけませんか?」
と来たものだ。
そこでお母さんと一緒に住む先の小学校に連れて行かれて、校長先生と直々に会う事になった。
すごく緊張したのを今でも覚えてる。
そこで開口一番、
「この子が男の……」
校長先生はそこまで言って言葉を失った。
そりゃあ、そうですとも。当時、小学四年生。顔立ち、体系、声共に女子生徒のそれですもの。さっきも言ったけど、ちょっとはもてたんだよ、あたし。顔立ちもそれなりにいいし。
何ていうのかな、その頃には女性寄りになってたから、女性の身体に男性が間借りしているようなものだったんだ。だからかも知れないけど、顔立ちは女性の中でも整ったほうだと自負できる。実際にそれなりにもてたし。あ、二回目か。
だからかな、それ以上は深く追及はされなかった。ただ、先天性疾患である、というのをお母さんが説明してたな。
そこで、晴れて女子として通う許可が出たんだ。
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